「もう少しAIが進化して、本当に仕事で使えるようになってから導入すればいい」
AIについて、経営者や管理職の方からこうした話を聞くことがあります。
確かに、生成AIは今も急速に進化しています。
今できないことでも、半年後、1年後には簡単にできるようになり、細かな指示を書かなくても、AIの方で意図をくみ取ってくれるようになるでしょう。
それなら、もっと便利になってから始めた方が楽ではないか。
そう考えるのも自然です。
ただ、実際にAI導入を支援していて、私は一つ大きな問題があると感じています。
AIは一気に進化する。でも、人間は少しずつしか慣れない。
AIがアップデートされたからといって、その翌日に人間までAIを使いこなせるようになるわけではありません。
特に、これまで仕事で生成AIを使ってこなかった方が、AIを自分の業務に継続的に使えるようになるまでには、思っている以上に時間がかかります。
経営者・管理職の方には、この「人がAIに慣れるまでの時間」を、AI導入の計画に入れておいてほしいと思っています。
AIと人間では、学習スピードがまるで違う
生成AIと人間では、能力が変化する時間軸がまったく違います。
ここでいう「AIの学習」とは、ChatGPTなどのAIが一人ひとりとの会話からその場で勝手に成長する、という意味ではありません。
新しいモデルや機能が公開されれば、私たちはその日から新しい能力を利用できます。
一方、人間はそうはいきません。

AIはアップデートされたその日から、新しい能力を使える
AIの進歩は非常に速いものです。
スタンフォード大学の「AI Index Report 2026」でも、AIの能力は頭打ちになっておらず、難しい科学問題、数学、ソフトウェア開発、PC操作など多くの領域で大きく性能が伸びていることが報告されています。
実際のソフトウェア開発能力を測る代表的なベンチマークでも、トップモデルの成績が1年間で大きく向上しています。
昨日まで難しかったことが、新しいモデルになった瞬間にできるようになる。
AI側では、こうした変化が起こります。
参考資料1
The 2026 AI Index Report(2026年 AI Index レポート)
誰が出している?
スタンフォード大学の「人間中心AI研究所(Stanford Institute for Human-Centered Artificial Intelligence/Stanford HAI)」が公表している年次報告書です。
スタンフォード大学は米国を代表する研究大学の一つで、Stanford HAIはAIの技術だけでなく、経済、社会、政策、教育などへの影響も研究しています。
AI Index Reportは、AIの研究開発、技術性能、経済、教育、政策などを大量のデータから整理しており、世界のAI動向を把握する代表的な資料の一つです。
どんな内容?
2026年版では、2025年のAI技術の進展を分析しています。
AI能力は依然として急速に向上しており、科学、数学、プログラミング、PC操作など複数の分野で大きな性能向上が確認されています。
人間は「使う・失敗する・直す」を繰り返して覚えていく
ところが、人間がAIを仕事で使えるようになる過程は違います。
たとえばChatGPTを仕事で使う場合、次のような経験を積んでいきます。
- 使ってみる
- 思った答えが出ない
- 指示を変える
- 必要な情報を追加する
- もう一度試す
- AIの得意・不得意が少し分かる
- 自分の仕事への使い方が分かってくる
この過程で身につくのは、次のような感覚です。
- このくらい説明しないとAIには伝わらない
- この資料も一緒に渡した方がよさそうだ
- これはAIの回答をそのまま信用したら危ない
- この仕事なら、最初の整理だけAIに任せればいい
こうした感覚は、マニュアルを一度読んだからといって、一気に身につくものではありません。
AIの進化を待っても、人間の経験値まで増えるわけではない
ここが、AI導入を考えるうえで重要なところです。
仮に2年後、今よりはるかに便利なAIが登場したとします。
そのAIを導入すれば、その日から最新のAIを使うことはできます。
しかし、その日に初めてAIを使う社員へ、2年間のAI利用経験まで一緒についてくるわけではありません。
AIは進化している。
しかし、人間側はそこからスタートです。
私は、この時間差を経営者や管理職が軽く見ない方がよいと考えています。
AI支援の厳しい現実――「使ってみる」から「仕事で使える」までは長い
ここからは、私自身がAI導入支援をしていて感じている話です。
これは研究結果ではなく、私が支援している事業所で実際に見てきた経験です。
そしてAI導入支援をしていて、最も厳しいと感じることの一つが、「教えれば使う」わけではないということです。
研修では使えても、一人になるとほとんど使わない
研修では、実際にChatGPTを開いてもらいます。
一緒に文章を作ったり、検索したり、仕事で使えそうな題材を試したりします。
その場では使えます。
そこで次の研修のときに、「この1か月、どんなことにAIを使いましたか?」と聞いてみます。
すると、AIをそれまで使っていなかった方からは、「いや、あの後1回検索に使っただけで……」「メール作成は試してみたんですけど……」という答えが返ってくることが珍しくありません。
研修中は一緒に操作する人がいます。
何を書けばいいか迷えば聞くことができます。
AIから変な答えが返ってきても、その場で「こう直しましょう」と修正できます。
しかし、一人になると違います。
何を入力すればいいのか。
思った答えが返ってこなかったら、次に何を書けばいいのか。
どこまで信用していいのか。
そこで止まってしまいます。
一番多かったのは、1回使ってみて、「よく分からないからやめた」というパターンでした。

目の前の仕事は、今まで通りやった方が早い
これは「社員が新しいものを嫌がっている」という単純な話ではありません。
現場には、今日やらなければならない仕事があります。
AIに何を書けばいいか考える。
返ってきた答えを読む。
思ったものと違えば、もう一度指示を書く。
そんな試行錯誤をするくらいなら、今まで通りWordやExcelを使って、自分で処理した方が早い。
導入直後は、実際にそうなります。
経営者から見れば、「せっかくAIを導入したのに、なぜ使わないのだろう」と感じるかもしれません。
しかし現場から見れば、その日の仕事を終わらせるために、最も慣れた方法を選んでいるだけです。
AIを使う方がまだ面倒なのです。
この「Wordで作る」という前提そのものが壁になる話は、下記の記事でも整理しています。
3か月ほどすると、「自分も使ってみよう」という人が増えてくる
ところが、研修や利用を続けていると少しずつ変化が出てきます。
私の支援先では、おおむね3か月ほど経ってくると、自分からAIを使う人が増えてくることが多くありました。
周りの人がAIを使っている。
「あの文章、AIで作ったんですか?」「それAIに整理してもらったんですか?」といった会話が出てくる。
便利に使っている人を目の前で見ることで、「じゃあ自分もやってみよう」という人が少しずつ増えてきます。
操作方法を教えるだけでは動かなかったものが、周囲の利用例や繰り返しの研修によって、少しずつ日常の選択肢になっていきます。
半年ほどすると、本当の意味で「業務に使える人」が出てくる
さらに半年ほど経ってくると、大きな変化が出てきます。
メール本文を作る、ちょっと調べ物をするという段階を超えて、自分からAIを実際の業務へ使う人が出てきます。
私の支援先では、次のような業務で、AIを使って自分で作業を進められる方が出てきました。
- 経理データの整理
- 勤怠管理
- 座標の読み取り
- データ整理
- 写真整理
- 申請書類作成
ここまで来ると、「AIを使ったことがある」ではありません。
「自分の仕事のどこにAIを使えるかを考え、自分で試して、必要なら指示を直して仕事を進める」という状態になっています。
私は、この状態をAI利用の「自走」と考えています。
そして、この状態まで進むには時間がかかります。
AIに慣れていた人ほど、新しいAIにも早く入れる
人間側のAI経験の差は、新しい仕組みを導入したときに、さらにはっきり見えました。
ある支援先で、ChatGPTのプロジェクト機能を利用した、その事業所専用のAI環境を作成したことがあります。
必要な資料やルールをあらかじめ整理し、その事業所の業務で使いやすいようにしたものです。
半年間AIを使っていた人は、専用AIの概要をすぐ理解できた
それまで半年ほど継続してAI研修を受け、自分でもChatGPTを使っていた方は、専用AIについて説明すると比較的すぐに概要を理解しました。
「ここに情報を入れて、こういう仕事を相談するものなんだな」というイメージがすでにあるからです。
新しいAIになっても、それまで積み上げた経験を使えます。
AI未経験者は「何を入力すればいいか」で止まった
一方、それまでほとんどAIを使っていなかった方では、違うところで止まりました。
専用AIそのものの設定が難しい、という以前の問題です。
「最初に何と言えばいいんですか?」
「何の情報を入れればいいんですか?」
「これに何を頼めばいいんですか?」
というところから始まります。
使える環境を用意していても、人間側にAIとのやり取りの経験がないと、なかなか動き出しません。

そこから4か月ほど経って、少しずつ触るようになった
その方たちも、使う機会を繰り返し作ることで、4か月ほど経過すると少しずつAIを触るようになってきました。
ここでも、AIを渡した瞬間に利用が始まったわけではありません。
「AIがある」から「AIを使う」までにも時間がある。
これは、AI導入を支援していて何度も感じるところです。
身につくのは「プロンプトの技」だけではない
AIに慣れるというと、「上手なプロンプトを書けるようになること」を想像するかもしれません。
しかし、もっと重要なものがあります。
- これはAIに聞けそうだと気づく
- 必要な情報をAIに渡す
- 答えが悪ければ条件を追加する
- AIが間違えやすいところを疑う
- 原資料と確認する
- AIに任せるところと人間が判断するところを分ける
こうした感覚です。
特定のChatGPTのボタン操作を覚えるというより、AIと一緒に仕事を進める方法そのものを覚えていると考えた方が近いでしょう。
研究からも見える「AIを使う側」の習熟の重要性
では、こうした現象は私の支援先だけで起きているのでしょうか。
海外の研究や企業調査を見ると、期間そのものは異なるものの、AIを仕事で使うには、人間側のスキル、訓練、経験が重要になるという方向の結果が複数報告されています。
AIには得意な仕事と苦手な仕事がある
ハーバード大学、ペンシルベニア大学、MIT、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などの研究者が、BCGのコンサルタント758人を対象に行った実験があります。
AIが得意な範囲の仕事では、GPT-4(2023年時点なので、当時最新のGPT-4を使った大規模実験)を使った人は、AIを使わなかった人より仕事が速くなり、品質も向上しました。
ところが、AIが苦手な範囲に設定された複雑な課題では、AIを使ったグループの方が、正しい解答を出す確率が19ポイント低くなりました。
研究者は、こうしたAI能力の特徴を「Jagged Technological Frontier(ギザギザした技術的境界)」と表現しています。
AIは、「簡単な仕事ならできて、難しい仕事ならできない」という単純なものではありません。
難しそうな仕事ができる一方で、意外なところで間違えます。
だからこそ、実際に使う人間側にも、「これは任せられる」「ここは怪しい」「ここは確認しよう」という感覚が必要になります。
参考資料2
Navigating the Jagged Technological Frontier: Field Experimental Evidence of the Effects of Artificial Intelligence on Knowledge Worker Productivity and Quality(ギザギザした技術的境界を進む――AIが知識労働者の生産性と品質に与える影響のフィールド実験)
誰が研究した?
ハーバード・ビジネス・スクール、ペンシルベニア大学ウォートン校、MITスローン経営大学院、ウォーリック・ビジネス・スクール、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などの研究者による共同研究です。
ハーバード・ビジネス・スクールやMITスローン経営大学院は、経営・組織・イノベーション研究で世界的に知られるビジネススクールです。
この研究は、組織論・経営学分野の査読付き学術誌「Organization Science」に掲載されています。
どんな研究?
BCGのコンサルタント758人を、AIなし、GPT-4利用、GPT-4に加えて使い方の説明を受けたグループなどに分け、実際のコンサルティング業務に近い課題を行わせた実験です。
AIが得意な仕事では、生産性や成果物の品質が向上しました。
一方、AIが苦手な領域の課題では、AIを利用した人の方が正答率が下がる結果も確認されました。
AIは非常に強力ですが、「どの仕事なら任せられるのか」「どこから人間が疑うべきなのか」を見極める能力も必要になることを示す研究です。
中小企業でも「AIを使うスキル」が大きな課題になっている
OECDは2024年末、日本を含む7か国、5,000社を超える中小企業を調査した結果として、生成AIを使っていない企業のうち、49.8%が「従業員に生成AIを使うための適切なスキルがない」ことを利用しない理由として挙げました。
さらに日本では、この項目が82.9%となり、調査された主な障壁の中で最も高くなっています。
これはかなり興味深い数字です。
ChatGPTは、専門的なプログラミングを知らなくても、日本語で普通に話しかけられます。
それでも企業側では、「社員が使うためのスキル」が導入の壁になっています。
参考資料3
Generative AI and the SME Workforce: New Survey Evidence(生成AIと中小企業の労働力――新たな調査データ)
誰が調査した?
OECD(経済協力開発機構)です。
OECDは、日本を含む各国政府が加盟する国際機関で、経済、雇用、教育、デジタル政策などについて国際比較調査や政策分析を行っています。
各国の統計や政策を比較する資料を継続的に公表しており、政府や企業の政策・経営判断でも参照される機関です。
どんな調査?
2024年末に、日本、ドイツ、カナダ、韓国、英国など7か国、5,000社を超える中小企業を対象に、生成AIの利用状況や人材・スキルへの影響を調査したものです。
生成AIを使っていない中小企業の49.8%が「従業員に必要なスキルがない」と回答しています。
日本では、この割合が82.9%でした。
また、生成AIを利用している中小企業でも、従業員がAI関連研修へ参加している企業は23.6%で、日本では11.3%にとどまりました。
AIを渡すだけでなく、研修や支援が利用率に関係している
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が2025年に行った「AI at Work」調査も参考になります。
11か国・地域、経営者・管理職・現場従業員など10,600人超を調査したところ、経営者や管理職では4分の3以上が生成AIを週に数回使っているのに対し、現場従業員の定期利用率は51%でした。
さらにBCGは、5時間以上のAI研修、対面研修、コーチングを受けられる従業員ほど、AIの定期利用率が高かったと報告しています。
この調査だけから「5時間研修すれば必ず使える」とは言えません。
しかし、AIツールを利用可能にしただけでは、現場利用は自動的には広がらないという点では、私の支援現場で感じていることとよく似ています。
参考資料4
AI at Work: Momentum Builds, but Gaps Remain(職場におけるAI――活用は進む一方、なお残る格差)
誰が調査した?
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)です。
BCGは、世界各国の企業や組織を対象に、経営戦略、組織改革、デジタル化などを支援している世界的な経営コンサルティング会社です。
大学による学術研究ではありませんが、多数の企業や従業員を対象とした職場でのAI利用実態を継続的に調査しています。
どんな調査?
2025年に11か国・地域、10,600人を超える経営者、管理職、ホワイトカラーの現場従業員を対象に、職場でのAI利用状況を調査しています。
現場従業員の定期的なAI利用は51%にとどまり、研修や経営層の支援がある人ほどAIの利用率が高い傾向が報告されています。
これは学術論文ではなく企業による大規模調査ですが、実際の企業内でAI利用を広げる際の参考データとして利用できます。
実際の仕事でAIを使うことが、人間側の習熟を助ける研究もある
もう一つ興味深い研究があります。
スタンフォード大学とMITの研究者が、大手企業のカスタマーサポート担当者5,172人を調べた研究です。
生成AIによる支援を利用した担当者では、1時間当たりに解決できる問い合わせ数が平均15%増加しました。
特に経験の浅い担当者で効果が大きく、処理件数は約30%増えています。
さらに研究では、AIを利用した勤続2か月程度の担当者が、AIを利用していない勤続6か月以上の担当者と同程度のパフォーマンスを示すという結果も出ています。
AIが、熟練者の仕事のやり方を経験の浅い人へ伝える役割を果たした可能性が指摘されています。
これは私の支援事例とは逆方向から見た話でもあります。
人間がAIに慣れるには時間がかかる。
しかし、実際の仕事の中でAIを使う経験が増えれば、AIそのものが人間の仕事の習熟を助ける可能性もある。
だからこそ、早く小さく使い始める意味があります。
参考資料5
Generative AI at Work(職場における生成AI)
誰が研究した?
スタンフォード大学のエリック・ブリニョルフソン教授ら、スタンフォード大学とMITの研究者による研究です。
ブリニョルフソン教授は、スタンフォード大学デジタル・エコノミー・ラボのディレクターを務め、長年にわたりIT、デジタル技術、AIと生産性の関係を研究している経済学者です。
この研究は2025年、経済学分野の主要な査読付き学術誌「The Quarterly Journal of Economics(クォータリー・ジャーナル・オブ・エコノミクス)」に掲載されています。
どんな研究?
大手企業のカスタマーサポート担当者5,172人について、生成AIによるリアルタイム支援の導入によって、仕事の生産性や経験の蓄積にどのような変化が生じたかを分析した大規模な実証研究です。
AI利用によって平均生産性が15%向上し、特に経験の浅い従業員で改善が大きくなりました。
また、AIを利用することで、経験の浅い担当者が熟練者の知識や仕事の進め方を利用しやすくなり、経験曲線を早く進める可能性も示されています。
AIがもっと簡単になっても、人間の経験まで自動では増えない
ここまで読むと、「でも、AIはこれからもっと簡単になるから、別に使い方は覚えなくてもいいのでは?」という疑問もあるかもしれません。
確かにAIはこれから発展しし、細かなプロンプトの書き方を意識しなくても、AIの方でこちらの意図を理解してくれる場面は増えていくと思います。
しかし、だからと言って私は、「今のChatGPTの操作方法を必死に暗記しなければならない」と言いたいわけではありません。
AIの操作そのものは、もっと簡単になるかもしれない
今後のAIでは、「○○と入力して、次にこのボタンを押して……」といった操作知識の重要性は下がっていくかもしれません。
AI側がこちらの意図を理解し、必要な処理まで提案してくれるようになる可能性もあります。
しかし、それで人間側の問題が全部なくなるわけではありません。
「何をAIに頼むか」は、自分の仕事を知らなければ決められない
たとえば土地家屋調査士事務所でAIを使う場合でも、次のような判断が必要です。
- 申請書類のどこをAIに作らせるのか
- 写真整理のどの工程を任せるのか(ファイル名?貼り付け?現況判別?)
- 座標データをどのように処理するのか
- 顧客向け文書のどこまでをAIに下書きさせるのか
そのためには、自分たちの仕事を理解していなければなりません。
AIが賢くなることと、自分たちの仕事のどこへAIを使えばよいか分かることは別です。
この「AI化できる仕事を探して試せる人」が事務所内にいるかどうかについては、AI導入のキーパーソンは、「AI化できる仕事」を探し、試せる人で整理しています。
「何の情報を渡すか」「どこを疑うか」にも経験が必要になる
生成AIは、与える情報によって回答が変わり、情報が足りなければ、期待した回答は出ません。
逆に、顧客情報や個人情報など、AIへ安易に入力してはいけない情報もあります。
また、AIは非常に自然な文章で間違った回答を出すことがあります。
だから、「何を渡すか」だけでなく、「何を渡さないか」「どこを確認するか」まで考える必要があります。
この点は、【AI×個人情報】第3部 AIの「知ったかぶり」と個人情報。「匿名化」が最強のハルシネーション対策になる理由で詳しく扱っています。
特に土地・測量・登記などの専門業務では、AIの出力を完成品として扱わず、原資料や公的情報と照合し、専門判断と最終確認は人間が行うことが前提です。
便利になってから始めても、人間側はそこからスタートする
将来のAIが、今とは比べものにならないほど便利になっていたとします。
それでも初めて使う人は、「何を聞こう?」というところから始まります。
一方、その時点ですでに数年間AIを仕事で使っている人は、「この新しい機能なら、今まで人間がやっていたこの部分を任せられそうだ」と考えるでしょう。
同じ最新AIを渡されても、スタート地点が違います。
この差は、AIそのものの性能差ではありません。
人間側に蓄積された経験の差です。
今覚えるのは「今のAI」ではなく、「AIと仕事をする感覚」
だから、今からAIを使う意味は、「現在のChatGPTの操作方法を覚えておけば将来も役に立つ」ということではありません。
AIは変わります。
画面も変わります。
機能も変わります。
しかし、AIに頼む、試す、回答を見る、疑う、修正する、自分の仕事へ戻す。
この経験は、AIが変わっても使えます。
AIとの仕事の仕方を少しずつ身につけていく。
私は、それが今AIを使い始める大きな意味だと考えています。
経営者・管理職は「AIを入れる日」ではなく「人が慣れる時間」から逆算する
AI導入を普通の業務ソフトと同じように考えると、人間側の時間を見落としやすくなります。
AIのアカウントを作る、有料プランを契約する、専用AIを作る。
これらは比較的短期間でできます。
しかし、社員がAIを自分の仕事に使うところは別です。
「AIを導入した=AI活用が始まった」ではない
AIを利用できる環境を作ることは、ゴールではありません。
むしろスタートです。
導入後に、次のような期間が必要になります。
- 実際に使う
- うまくいかなかった経験をする
- 使い方を共有する
- 安全な使い方を覚える
- 実務で使える用途を増やす
AIを「使う」段階から「仕事に組み込む」段階へどう進めるかは、土地家屋調査士事務所はDXからAXへ|AIを「使う」から「仕事に組み込む」へで整理しています。
最初から難しい業務をやらせない
私の支援でも、最初はメール文作成、文章の要約、調べ物、アイデア整理、簡単な文書作成などから始めます。
重要なのは、最初から大きな成果を求めることではありません。
「仕事でAIを開く」ことを普通にする。
まずはここです。
最初の一歩の選び方は、【実例】AI導入は「日報」から?早く始めた事務所だけが実感する“圧倒的な差”の正体と土地家屋調査士のためのAI入門|まずは「できることを早く正確にする」から始めるもあわせてご覧ください。
一度の研修ではなく、使う機会を繰り返し作る
一度の研修で使えたから、翌日から定着するとは限りません。
使わなかった人を責めるより、「この仕事ならAIを使えないか」と繰り返し考える機会を作る方が重要です。
研修、実際の業務、成功例の共有。
これを繰り返すことで、少しずつAIが日常の選択肢に入ってきます。
「自分も使ってみよう」が生まれる環境を作る
AIを使う人が一人出てくると、周囲も変わります。
AIについての説明を100回するより、「これAIでやったら10分で整理できました」という同僚の一言の方が、使ってみようと思えることもあります。
事務所全員を一斉にAI人材へ変えようとするより、まず使う人を作る。
その人の使い方を共有する。
そこから広げる。
私の支援先でも、この流れが実際に起きています。
本格活用したい時期から、人間の習熟期間を逆算する
経営者・管理職の方に、この記事で一番伝えたいのはここです。
半年後にAIを仕事で使いたいのであれば、半年後から始めるのでは遅い。
AIがもっと便利になるのを待つこと自体が悪いわけではありません。
しかし、AIが便利になったとき、社員がそのAIを使える状態になっているかどうかは別問題です。
AI導入を考えるときは、「いつAIを入れるか」だけでなく、「いつまでに、人に慣れていてほしいか」から逆算する必要があります。
なお、AI導入の前に「そもそも、どの業務を改善すべきか」が決まっていない場合もあります。
その場合は、日々の業務記録から現在地を確認する方法もあります
(AI業務分析)。
まとめ|AIは一気に進化する。でも、人間は少しずつしか慣れない
生成AIは、これからも進化していくでしょう。
もっと簡単になり、今では考えられないような仕事までできるようになるかもしれません。
しかし、人間が新しい道具に慣れ、自分の仕事へ取り込み、失敗しながら使い方を覚えていく時間まで、自動的に短くなるわけではありません。
私の支援先でも、次のような変化を見てきました。
- 最初は1回使って終わり
- 3か月ほど経って、自分でも使い始める人が増える
- 半年ほど経って、実際の業務でAIを自走して使う人が出てくる
さらに、AI利用経験のある人ほど、新しい専用AIについても早く理解できました。
AIがもっと便利になったとき、そのAIを活用できるかどうか。
その差を作るのは、もしかするとAIの性能ではなく、それまで人間側が積んできた経験かもしれません。
だからこそ、将来本格的にAIを活用したいのであれば、完成したAIを待つのではなく、今から小さく触り、失敗し、直し、仕事で使う経験を積んでおく。
それが、これからのAI導入では重要だと私は考えています。
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