最近は、支部研修のアンケート回答などでも、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを土地家屋調査士業務で使っているという方が増えてきました。
文章作成や要約だけでなく、地積測量図から座標を読み取る、登記事項証明書から必要な情報を抜き出す、申請書の下書きを作る、複数の資料を比較する。
少し使い慣れてくると、「これは調査士業務にもかなり使える」と感じる場面が出てきます。
ただ、生成AIの活用を事務所全体で考えると、その先があります。
職員が必要な資料をその都度ChatGPTへ読み込ませて使う状態から、事務所に蓄積された申請様式や行政資料、過去案件などをAIが利用できる状態へ進む。
さらに、AIを使うことを前提として、仕事の流れそのものを組み直していく。
こうした企業・組織の変化を考えるうえで参考になるのが、AX(AI Transformation)です。
東京大学・松尾岩澤研究室では、企業のAXをAX1からAX5までの段階で整理しています。
この記事では、その中でも土地家屋調査士事務所で現実的に考えやすいAX1・AX2・AX3を取り上げます。
そして後半では、官民境界確認申請という一つの業務を例に、
事務所がAX1からAX2、AX3へ進むにつれて、同じ仕事がどう変わるのか
を具体的に見ていきます。
AXの前に、土地家屋調査士事務所のDXを少し振り返ってみる
AXという言葉だけを聞くと、「かなり先進的な企業の話ではないか」と感じるかもしれません。
しかし、土地家屋調査士の仕事を10年、20年前と比べてみると、私たちはすでに大きな変化を経験しています。
分かりやすいのが、登記申請の完全オンライン化です。
オンライン申請そのものは、2005年から始まっていたので今さら新しいものではありません。
その後、調査士報告方式などの仕組みが整い、表示に関する登記では、案件によって申請情報だけでなく添付情報まで電子的に処理できるようになりました。
「申請情報はオンラインで送るが、紙の添付書面は法務局へ持参・郵送する」という仕事から、紙を届ける工程そのものを省ける形へ変わっています。
Google Drive、OneDrive、Dropboxなどによる案件資料の保存・共有も身近なDXです。
事務所の特定のパソコンにしかなかった資料を、外出先から確認したり、複数人で同じ案件フォルダを共有したりできるようになりました。
測量では、電子基準点を活用したGNSS測量によって、条件や採用する測量方法が合えば、既知点から地上の基準点を順次設置・観測していく作業を減らせる場面があります。
さらに、ドローン測量・空撮、3Dスキャナ、点群データ処理まで使えば、現況情報の取得方法や、その後の処理方法まで変わります。
こうして振り返ると、最新機器を大量に導入している事務所でなくても、
- 登記をオンライン申請している
- 案件資料をクラウドで共有している
- GNSSを利用している
という事務所は珍しくありません。
「DXと言われても、うちは大したことをしていない」と思っていたとしても、実際にはこの10年、20年で仕事の方法をかなり変えてきたはずです。
そして、その過程で登記事項、公図、地積測量図、測量データ、写真、申請書、行政資料など、多くの情報がデジタルデータになりました。
このDXによって作られた土台を、今度はAIに使わせていく。
そこからAXを考えると、土地家屋調査士事務所にとっても遠い話ではなくなります。
DXで作った土台から、AXへ
AXは「AI Transformation」(AIトランスフォーメーション)の略です。
土地家屋調査士事務所に引き寄せて考えるなら、DXとAXの関係は次のように整理できます。
| DX | AX |
|---|---|
| 仕事や資料をデジタル化する | AIがデジタルデータを利用する |
| データや業務をつなぐ | AIをその流れへ組み込む |
| デジタル技術で仕事を変える | AIを前提に業務や組織を変える |
これまでのDXによって、AIが利用できる材料はすでに事務所内にかなり蓄積されています。
AXでは、そのデータをAIが利用できるようにし、さらに人とAIの役割まで含めて仕事を組み立てていきます。
DXで作ったデジタルの土台を使って、AXへもう一段進む。
そう捉えると分かりやすいでしょう。
松尾・岩澤研究室が示す「AX1〜AX5」
日本のAI研究の最前線を走る東京大学・松尾岩澤研究室は、企業のAXを5つの段階に整理しています。
2026年の日本成長戦略会議でも、松尾豊氏から次のAX1〜5が示されています。
| 段階 | 名称 | 組織としての状態 |
|---|---|---|
| AX1 | 生成AI導入 | 社員が生成AIを利用できる環境やルールを整える |
| AX2 | データ連携統合 | 社内データをAIと接続して利用する |
| AX3 | 業務プロセス刷新 | AIを前提として業務プロセスを見直す |
| AX4 | 独自AI開発 | 自社固有のAIを開発する |
| AX5 | 高度AI開発 | 業界・サプライチェーン規模の高度なAI基盤へ広げる |
企業・団体としてAI活用をどこまで組織へ広げているかを見る段階として整理されています。
この前提で、AX1〜3を土地家屋調査士事務所へ置き換えると、このようになります。
AX1:職員がAIを使う。
AX2:AIが事務所のデータを使う。
AX3:AIを前提に事務所の仕事の流れを組み直す。
AX4:自社で固有の調査士業務AIを開発する
AX5:土地家屋調査士業界規模の高度なAI基盤を広げる
ただ、AX4・AX5になると、自社固有AIの開発や業界規模でのAI基盤構築といった話になるため、この記事ではAX1〜AX3の3つを軸に考えていきます。
土地家屋調査士事務所がAX1からAX3へ進むと何が変わるのか
ここでは、土地家屋調査士事務所において、AX1からAX3へと進むと、実際にどんな変化が起こるかを紹介します。
AX1|職員が生成AIを実務で使う

AX1は、生成AIが事務所の日常業務へ入り始めた段階です。
たとえば、
- 地積測量図から座標を抽出する(テキスト化)
- 登記事項証明書から必要事項を整理する
- メールや説明文を作る
- 申請書の下書きを作る
- PDFの内容を比較・整理する
といった使い方です。
必要な資料を職員が選び、ChatGPTなどへ読み込ませて、その都度指示を出します。
一つひとつの仕事は速くなりますが、どの資料を使うのかを考え、ファイルを探し、AIへ渡す。
そして、「メールの下書きを作って」といった今回何をしてほしいのかを説明するところまでは職員が担当します。
事務所のあちこちで、
「この作業はChatGPTにやらせた方が早い」
という使い方が始まっている状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
AX2|AIが事務所のデータを利用する

AX2へ進むと、職員がそれぞれ資料を集めてAIへ渡すだけでなく、事務所に蓄積された情報をAIが利用できる環境を整えていきます。
土地家屋調査士事務所なら、
- 官公署ごとの申請様式
- 要綱や申請マニュアル
- 事務所内の業務ルール
- 過去案件(イレギュラー案件や、エリアごとの案件)
- 道路・水路の管理者情報
- 管轄・申請先情報
などが候補になります。
AX1では、
「この自治体ではこの様式を使います」
「必要書類はこれです」
「うちの事務所ではこの場合こう処理します」
と、職員が毎回AIへ材料を与えます。
AX2ではAIが事務所内の情報を検索・参照し、案件固有の資料と事務所に蓄積された情報を組み合わせて処理できるようになります。
そのために使える技術の一つがRAGです。
RAGは、AIが社内資料や外部資料を検索し、必要な情報を参照して回答を作る仕組みです。
ただしAX2そのものがRAGを意味するわけではありません。
RAGは、事務所の資料をAIに参照させるために使える技術の一つであり、データベースや検索機能、APIなども含めて、AIと事務所のデータをつなぐことがAX2の中心になります。
AX1からAX2へ進むことで、
毎回探す、毎回読み込ませる、毎回同じことを説明する
という職員側の準備作業が減っていきます。
AX3|AIを前提として業務プロセスを見直す

AX3では、一つひとつのAI活用から、業務プロセス全体へ視点が広がります。
たとえば、新しい測量案件を受任したあとには、
案件登録、資料整理、必要手続の確認、官民境界確認の要否、管理者・管轄の確認、申請書作成、添付資料準備、日程・タスク管理など、複数の工程があります。
AX1やAX2でも、それぞれの場面でAIを使えますが、AX3ではさらに、案件登録を起点として、
どの情報をAIへ渡すか
→ AIがどこまで処理するか
→ どこで人が確認するか
→ 確認後、何を次工程へ渡すか
まで含めて仕事の流れを組み直します。
ここまで進むと、AIは「必要なときに呼び出す便利な道具」から、業務プロセスの一部へ入ってきます。
AX1からAX3までの違いを一言で整理するなら、
AX1では「AIを使う」。
AX2では「事務所のデータをAIにつなぐ」。
AX3では「AIを前提に仕事を組み直す」。
という変化です。
では、事務所がこの3段階を進んでいくと、一つの具体的な業務はどう変わるのでしょうか。
官民境界確認申請から見る、AX1・AX2・AX3の違い
ここからは、官民境界確認申請業務を例にして解説します。
事務所全体がそれぞれの段階にあるとき、同じ官民境界確認申請をどう処理できるのか、を見ていきましょう。
AX1の段階|人が資料を集め、AIに申請書を作らせる
AX1でも、官民境界確認申請の書類作成にAIを使えます。
職員が自治体のホームページを開き、
- 申請様式
- 要綱
- 必要書類の案内
などを探します。
さらに、
- 登記事項証明書
- 公図
- 地積測量図
- 住宅地図などの位置資料
を揃えてAIへ読み込ませれば、必要事項を抽出し、申請書案を作らせることができるので、転記や下書きはかなり速くなります。
一方、どの自治体へ申請するのか、どのページに様式があるのか、何をAIへ渡せばよいのかといった準備は、人が案件ごとに行います。
AX2まで進むと|AIが事務所データを参照して業務を処理する
事務所がAX2まで進んでいれば、申請先ごとの情報を事務所データとしてAIから利用できます。
たとえば、
- 自治体ごとの申請様式
- 要綱
- 必要書類
- 現況実測図等の作成要領
- 申請方法
- 道路・水路の管理者情報
- 管轄・申請先
- 過去案件
などです。
新しい案件について登記事項証明書や公図などを入力すれば、AIは案件固有の情報と事務所側の行政情報を組み合わせて処理できます。
その結果、
「この自治体の様式はどこだ」
「必要書類は何だったか」
「この場合の申請先はどこだったか」
と毎回調べ直す場面を減らせます。
さらに、事務所データに所在地と管理者・管轄・申請先の対応関係まで整備されていれば、AIが所在地などから申請先候補を判定するところまで自動化することもできます。
※名古屋市、愛知用水土地改良区はエリアによって申請先が異なります
AX3まで進むと|案件登録から申請準備までを一つの流れにできる
AX3では、AX2で可能になったデータ参照やAIによる省力化・自動化を前提として、官民境界確認申請を独立した書類作成業務として扱うのではなく、案件全体の業務プロセスへ組み込みます。
①人間が新規案件の登録時に、登記事項証明書、公図、住宅地図などの位置資料、発注者、完了予定日などを入力する。
②AIが案件情報を整理し、官民境界確認が必要になりそうな箇所を抽出する。
③登録したデータ(ナレッジ)から管理者や申請先の候補を探し、該当する様式・要綱を参照して申請書案を作成する。(名古屋市や愛知用水土地改良区の場合にエリアごとで申請先まで判別する)
④必要な添付資料や不足資料を整理して、申請書・郵送書類・封筒などのデータを転記する。
⑤今後のタスクや仮工程まで作る。
⑥人間は、原資料、管理者・管轄、申請内容、専門判断、日程などを確認します。
効率化の対象が「申請書を作る作業」から、「案件登録から申請準備へ続く業務プロセス」へ広がるのがAX3です。
AX3では、「名古屋市中川区なら西部方面」「東海市なら愛知用水の大府事務所」といった申請先の判別や書類作成を個別にAIへ依頼するのではなく、AIはその結果を次の工程へ引き継ぎ、「名古屋市中川区→西部方面→西部方面への申請書作成→道路証明発行までの仮工程作成」といった、不足資料の整理や仮工程の作成まで一連の業務としてつなげます。
こうした仕組みまで作れば、人間の作業を、案件登録時の基本情報入力と、AIが作成した書類・申請先・仮工程等の確認へ大きく集約することも可能です。
このように、AIを前提として業務フローを組みなおす、これがAX3の段階です。
名古屋市と幸田町で、AXの効果の出方を比べてみる
ここまで事務所側のAXについてお話しましたが、申請先のデジタル環境によっても効果の出方は変わります。
その違いを見るために、名古屋市と幸田町の境界確認申請を比べてみます。
名古屋市|大量の行政資料と電子申請があるからこそAX2・AX3が効く
名古屋市では、道路等境界確認申請の電子受付が始まっており、2026年10月から原則として電子申請へ移行する予定です。(楽にはなると思いますが、大変そう・・・)
ホームページには、申請様式だけでなく、要綱、現況実測図作成要領、電子申請マニュアルなど、多くの資料が公開されています。
AX1では、必要な資料を職員がその都度探し、案件資料と一緒にAIへ読み込ませるので、AIによる書類作成はできますが、行政資料が多い分、職員が準備する手間も残ります。
AX2まで進めば、名古屋市の要綱、様式、作成要領、電子申請方法、管理者情報などを事前にAIから参照できるようにしておけます。
ここでは、大量の行政資料を毎回探し直さなくてよくなる効果が特に大きくなります。
さらにAX3まで進めば、
案件資料の登録・入力(人間)
→ 必要情報の抽出(AI)
→ 申請先や路線等の候補抽出・判定(AI)
→ 申請書案作成(AI)
→ 電子申請用の入力情報整理(AI)
→ 添付PDFの準備(AI)
→ 内容・申請先・根拠資料の最終確認(人間)
までを、案件受付・案件管理のプロセスに組み込んだ一連の標準フローとして設計できます。
行政側に電子申請というデジタルの出口があるため、事務所のAXが進むほど、案件登録から申請直前までをつなげやすい例です。
幸田町|紙提出が残っていても、事務所内部の処理は変えられる
幸田町の「道路・水路の境界確認」ページでは、公有地境界確認申請書、立会予定者一覧表、同意書、取下書、期間延長願などがWord・Excel形式で公開されており、書面申請がメイン(というか書面での受付のみ)です。
AX1では、案件資料と幸田町の様式をAIへ渡して、申請書や隣地一覧表の案を作ります。
AX2の事務所であれば、幸田町の様式や必要書類をAIから参照できるようになるため、職員が毎回同じ資料を探したり確認したりする作業を減らせます。
AX3では、
案件登録(人間)
→ 必要様式の選択(AI)
→ 申請書・一覧表の作成(AI)
→ 添付資料の整理・不足確認(AI)
→ 提出用一式の準備(AI)
→ 内容・申請先・添付資料の最終確認(人間)
までを、案件受付から申請準備までの一つの標準的な業務フローへ組み込むことができます。
最終的な提出に紙が残っていても、そこへ至るまでの事務所内の作業は短縮できます。
名古屋市の場合と違うのは、書類の印刷・郵送が残るくらいでしょうか。
しかしこれは、役所側の手順が違うだけのことです。
同じAX段階でも、外部のデジタル環境によって到達点は変わる
整理すると、次のようになります。
| 事務所の段階 | 名古屋市での処理イメージ | 幸田町での処理イメージ |
|---|---|---|
| AX1 | 案件資料と行政資料をその都度AIへ渡す | 案件資料と様式をその都度AIへ渡す |
| AX2 | 多数の要綱・様式・電子申請資料等を AIから利用する | 様式・必要書類等をAIから利用する |
| AX3 | 案件登録から電子申請直前までつなげやすい | 案件登録から紙提出用書類一式の準備まで つなげられる |
この比較で見たいのは、名古屋市と幸田町の優劣ではありません。
AX2では、AIが使えるデータと省力化・自動化できる範囲が広がる。AX3では、その能力を前提に、人とAIの役割分担や仕事の順番、確認ポイントまで含めて業務プロセスそのものを見直す。
そのうえで、行政側に電子申請の仕組みがあれば、事務所内のAXを行政手続までつなぎやすくなります。
紙の提出が残っていても、その直前までの内業をAI中心の流れに変えることはできます。
AX3まで進んでも、すべての業務を作り替える必要はない
AX1〜5は事務所全体の段階です。
だから、事務所全体としてAX3まで進んだからといって、すべての仕事を複雑なAIワークフローへ作り替える必要はありません。
たとえば、地積測量図から一度だけ座標を抽出したいなら、AX3まで進んだ事務所でも図面をAIへ渡して一覧化するだけで十分です。
一方、官民境界確認申請のように、管理者確認、管轄確認、様式選択、書類作成、添付資料整理、工程管理など複数の作業が連続する業務では、AX3の業務プロセス刷新を行う効果が大きくなります。
組織としてAXをどこまで進めるかと、一つひとつの業務へAIをどこまで組み込むかは、分けて考える必要があります。
土地家屋調査士事務所がAXを進めるなら、まずAX1から
事務所全体としてAXを進める場合も、最初から複雑な仕組みを作る必要はありません。
まずAX1として、職員が生成AIを実務で使うところから始めます。
座標抽出、情報整理、転記、比較、要約、下書きなど、原資料と照合して正誤を確認できる仕事は導入しやすいでしょう。
利用する仕事が増えてくると、
「この資料を毎回アップロードしている」
「職員が同じ行政資料を何度も探している」
「同じ事務所ルールを毎回AIへ説明している」
といった重複が見えてきます。
そこで、事務所に蓄積された情報を整理し、AIが利用できるAX2へ進む価値が出てきます。
さらに、個々の作業が効率化されたあとにも、
「申請書は速く作れるようになったが、その前後の調査や転記は残っている」
「AIの出力を職員が次の工程へ手作業で移している」
といった状態があれば、AX3として業務プロセス全体を見直す余地があります。
生成AIを導入する。
事務所のデータとつなぐ。
その環境を前提に仕事の流れを見直す。
土地家屋調査士事務所でも、この順番ならAXを具体的に考えられます。
AXが進むほど、人が確認する場所の設計が重要
AX2、AX3へ進むにつれて、AIが扱うデータや工程は増えていきます。
そのため、AIに任せる範囲を広げるだけでなく、人がどこで確認するかも一緒に設計する必要があります。
情報の抽出、転記、分類、比較、要約、定型書類の下書きなどはAIへ移しやすい工程です。
一方で、現場確認、境界に関する専門判断、例外案件への対応、依頼者や隣接土地所有者への説明、行政との個別協議、成果物の最終確認などでは、土地家屋調査士の判断が中心になります。
たとえば、AIが道路管理者の候補を提示した場合でも、根拠資料を確認し、今回の申請先として正しいかを判断する工程は人が担当します。
申請書案についても、AIが作成した内容を専門家として確認し、最終的に申請する責任は土地家屋調査士側にあります。
AX3で業務プロセスを見直すときには、
AIが処理する工程と、人が確認・判断する工程をセットで設計する。
この考え方が、AIを業務へ安定して組み込むうえで重要になります。
小牧市宛の書類が北海道に届いたことがある
10年以上前の話です。
ある事務所では、抵当権抹消登記の業務を自動化して毎日何十件と登記申請していました。
事務担当「〇〇先生、北海道の法務局から連絡が入っています」
〇〇先生「え??」
その業務は全国の物件があったので、関西・関東から連絡が入ることはありました。
しかし北海道の案件は無く、司法書士の〇〇先生も驚いていたとか。
結果としては、案件と関係のない法務局に申請書類が届いていたことが原因でした。
愛知県小牧市の案件の書類が、北海道の札幌法務局苫小牧支局に届いていたのです。
・・・小牧市、苫小牧支局( ゚д゚)ハッ!
そうなんです。
自動化システムの中で、市町村名から管轄法務局を判別するのですが、システムの判別が甘かったため、小牧市を本来の春日井支局ではなく、苫小牧支局管轄だと判別してしまったのです。
たぶんですが、人間の目で確認していれば防げたと思います。
(当時、実際にどのようなチェック体制だったのかまでは分かりません)
こういったシステムは便利ですが、やはり人間の目で最終チェックすることはとても重要だと、いつも思い出します。
当時聞いた話では、苫小牧支局から急いで書類を返送してもらったものの、北海道からですから当然すぐには届きません。
書面の到着期限にも間に合わず、最終的には春日井支局へ事情を説明し、却下にはならずに済んだそうです。
笑い話のようですが、実務ではまったく笑えません。
まとめ|AX1〜3は「仕事のランク」ではなく「事務所の変化」
土地家屋調査士事務所へAX1〜3を当てはめると、全体像はシンプルです。
AX1では、職員が生成AIを使う。
AX2では、事務所に蓄積されたデータをAIとつなぐ。
AX3では、その環境を前提として業務プロセスを見直す。
AX1〜5は、一つひとつの仕事に付けるランクではなく、企業や団体としてAI活用をどこまで進めているかを見るための段階です。
官民境界確認申請をAX1〜3で比較したのも、この業務にランクを付けるためではありません。
事務所がAX1からAX2、AX3へ進んだとき、一つの仕事がどう変化するのかを具体的に見るためです。
AX1では、職員が資料を集めてAIへ渡す。
AX2では、AIが事務所の行政資料や管理者情報を使える。
AX3では、案件登録から申請準備までを一つの業務プロセスとして見直せる。
この違いが分かると、「ChatGPTを使っている」という状態から、その先に何があるのかも見えてきます。
土地家屋調査士事務所は、オンライン申請、クラウド、GNSSなどを通じて、DXによる大きな変化をすでに経験してきました。
まず職員がAIを使う。
次に、事務所が持っているデータをAIにつなぐ。
そして、効果の大きい業務からAIを前提に仕事の流れを見直していく。
今度は、これまでDXで作ってきたデジタルの土台を、AIに使わせる番です。
まずはAX2を目指したい、という方へ
生成AIを使い始めて、個々の作業では便利になった。
その一方で、
- 毎回同じ資料をChatGPTへ読み込ませている
- 職員ごとにAIの使い方がバラバラになっている
- 事務所の様式やマニュアル、過去案件をAIに使わせたい
- 自分の事務所はAX2・AX3のどこを目指せばよいのか整理したい
という段階で止まっている事務所も多いと思います。
まずAX2を目指したい。
事務所のデータをAIとどうつなげればよいか考えたい。
その先のAX3まで進めるべき業務があるのか、一度整理してみたい。
そういった場合は、AIの杜さいたの無料相談をご利用ください。
(もちろん、安全にAX1から始めたい、という方も大歓迎です!)
現在のAI活用状況や事務所の業務を伺いながら、まずどこを目指すのが現実的か、一緒に整理します。
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