去る4月24日、神奈川青年土地家屋調査士会様よりご招聘いただき、神奈川県土地家屋調査士会館にてAI研修を担当させていただきました。
※今回はオンライン(Zoom)での開催でした
青年土地家屋調査士会は全国で組織されており、都道府県単位で土地家屋調査士会員(有資格者)を対象に業務についての研究・研修を行なっている組織です。
テーマは、
「情報漏洩が怖い」「嘘をつかれそう」
その不安、正解です。
正しく恐れて120%活用する AI×調査士 実務の極意
です。
当日は40名以上の土地家屋調査士の先生方にご参加いただき、神奈川県土地家屋調査士会館の研修室がいっぱいになるほどの大盛況となりました。
会場全体から、土地家屋調査士業務におけるAI活用への関心の高さと、実務に取り入れようとする熱意を強く感じました。
まずは実演:地積測量図のテキスト化
今回の研修でも、最初にAIを使った「地積測量図の読み取り+テキスト化」の実演を行いました。
地積測量図をAIに読み込ませ、座標値などを抽出し、整理されたテキストデータとして扱えるようにするデモです。
この実演では、参加者の皆さまに「今のAIが、実務に近い資料をどこまで処理できるのか」を体感していただけたと思います。
アンケートでも、「もっと知りたい」「聞きたかったことが聞けた」と感じたテーマとして、地積測量図の読取補助が最も多く選ばれました。
一方で、AIは万能ではありません。
私のプロンプトでは「靴紐公式による検算」「座標ごとの検算」を行う4段階チェックを組み込んでおり、できる限り精度の高い出力ができるように作成しておりますが、数値の読み間違い、抜け落ち、桁ズレ、図面の解釈違いは起こり得ます。
特に、基準点の座標や点名は検算・検証ができないため、特に注意が必要です。
そのため、AIの出力はあくまで「下処理」「たたき台」として使い、最後は必ず土地家屋調査士の先生が確認する。この前提は、今回の研修でも繰り返しお伝えしました。
なお、このプロンプトはこちらのページでご紹介しています。
地積測量図のテキスト化を動画で観る
今回の中心テーマは「AIを安全に使うこと」
今回の研修は、少し攻めた内容にしました。
単に「AIは便利です」「こんな使い方ができます」という話だけではなく、土地家屋調査士業務でAIを使う場合に避けて通れない、個人情報保護・守秘義務・職務倫理の問題を正面から扱いました。
具体的には、個人情報保護法、土地家屋調査士法、土地家屋調査士倫理などを踏まえながら、AIにどこまで情報を入力してよいのか、何を入力してはいけないのか、どのプランを使うべきなのかを整理しました。
特に反応が大きかったのは、有料版ChatGPTであっても、個人向けのChatGPT PlusやChatGPT Proに依頼者情報・隣地所有者情報・事件情報などの個人情報をそのまま入力する運用は避けるべき、という点です。
「有料版なら安全」という単純な話ではなく、個人向けプランなのか、法人向けプランなのか、入力データが学習に使われるのか、管理者設定や契約関係はどうなっているのかを確認する必要があります。
土地家屋調査士業務は、依頼者、隣地所有者、関係者の個人情報を多く扱う仕事です。
だからこそ、AIは「便利だから使う」のではなく、正しく恐れて、安全なルールを決めたうえで使うことが大切です。
アンケート結果:満足以上が96%超
研修後のアンケートには、26名の方からご回答をいただきました。

- とても満足:10名
- 満足:15名
- どちらともいえない:1名
「とても満足」「満足」を合わせると25名で、満足以上の割合は約96%となりました。
また、現在のAI利用状況については、すでに週1回以上AIを使っている方が17名いらっしゃいました。
- 週3回以上:8名
- 週1〜2回:9名
- 月1回未満:5名
- まだ使ったことがない:4名
すでに使い始めている先生も多い一方で、「まだ使ったことがない」「月1回未満」という方も一定数おり、会場全体としては、AI未経験者から実務利用者まで幅広い層が集まる研修となりました。
関心が高かったテーマ
アンケートで、特に「もっと知りたい」「聞きたかったことが聞けた」と選ばれたテーマは、次のとおりです。
- 地積測量図の読取補助:16名
- RAG(検索拡張生成)の仕組みと実務での使い方:12名
- クラウドAIの情報漏洩リスクと、職務倫理・個人情報保護法の関係:11名
- 無料版と法人向け有料版の違い:11名
- 隣地挨拶状や経緯説明文など文案の初稿作成:8名
結果を見ると、単に「便利なプロンプトを知りたい」という段階から一歩進んで、安全性・精度・実務導入のルールへの関心が高まっていることが分かります。
特に、RAGや匿名化、法人向けプランの違いといったテーマは、AIを「試す」段階から、事務所として「安全に使い続ける」段階へ進むうえで重要な論点です。
AIに効率化してほしい業務
「AIツールにぜひ効率化してほしい業務」として多く選ばれたのは、次の項目です。

- 調査報告書の入力・作成:16名
- 隣地挨拶状・送付書類の作成:15名
- 画地調整:10名
- 経理のレシート・支払い管理:10名
- 事務所マニュアル作成:8名
- 打ち合わせ内容の書面化・文字起こし:8名
ここからも、土地家屋調査士業務においてAIへの期待が高いのは、現場作業そのものよりも、入力・整理・文章化・記録化といった事務作業であることが見えてきます。
調査報告書の自動作成、画地調整はまだ実現が難しい(調査報告書は建物構造の判断が難しい、資格者が過去資料を『どんな手順で使った・根拠としたか』をAIに説明しなければいけないので、直接入力した方が早い)ですが、他の作業については現実にAI化されています。
「スペシャルなAI活用」と、今のAIの現実
研修では、「土地家屋調査士業務に使える、もっとスペシャルなAIの使い方はないのか」というご質問・期待もありました。
この点については、あえて現実的なお話もしました。
現時点で土地家屋調査士業務に使いやすいAI活用は、地積測量図のテキスト化、データ整理、隣地挨拶状、送付状、越境物覚書の下書き、経緯説明文の整理、打ち合わせメモの要約などが中心です。
一方で、調査素図の自動作成や、図面に直接正確な書き込みを行う作業は、今のAIにとってはまだ難しい領域です。
たとえば、図面上の情報をテキスト化して、CADに貼り付けるための材料を作ることはできます。
しかし、最初からCAD上に正確に入力・作図するのであれば、現状では人間がCADで入力した方が早い場面も多いです。
つまり、AIは「何でも自動でやってくれる魔法の道具」ではありません。
今のAIは、現場作業やCAD作図そのものを完全に代替するというより、優秀な事務作業の補助者として使うのが現実的です。
ただし、「今のAI」では、という話です
もっとも、これはあくまで「今のAIでは」という話です。
AIの進化は非常に速く、数年後には、現在は難しいと感じている作業の一部が当たり前にできるようになっている可能性があります。
だからこそ大切なのは、今すぐAIに全部を任せることではありません。
まずは、地積測量図の読取補助、文章作成、データ整理、マニュアル作成、打ち合わせ記録の整理など、今すぐ使える事務作業からAIを取り入れることです。
そして、AIのできることが増えるたびに、事務所の使い方も少しずつ進化させていく。
そのためには、単発で便利な使い方を覚えるだけでなく、事務所内でAI利用ルールを整え、個人情報の取り扱い方法を決め、適切なプランを選び、必要に応じてRAGや匿名化の仕組みを取り入れていくことが重要です。
今回の研修では、まさにその第一歩として、AIを「怖いから使わない」のではなく、正しく恐れて、安全に活用するための考え方をお伝えしました。
ご参加ありがとうございました
神奈川青年土地家屋調査士会の皆さま、この度は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。
参加者の皆さまの反応やアンケート結果からも、土地家屋調査士業務におけるAI活用は、すでに「一部の詳しい人だけの話」ではなくなっていると感じます。
今後も、土地家屋調査士の先生方がAIを安全かつ実務的に活用できるよう、研修・個別相談・AI導入支援を通じて、現場に即した情報をお届けしていきます。
AIの活用にご興味のある土地家屋調査士会・支部・勉強会の皆さまは、お気軽にご相談ください。
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