本気で「隣地挨拶状作成のAI化」をChatGPTに考えさせてみた(土地家屋調査士×AI)

本気で「隣地挨拶状作成のAI化」をChatGPTに考えさせてみた(土地家屋調査士×AI)

一番簡単にAI化しやすいのは隣地挨拶状作成業務?!

土地家屋調査士向けのAI活用を考える中で、私は以前から「隣地挨拶状の作成」はAIで効率化できる業務の一つと考えていましたが、簡単にAI化できそうなので、研修や支援先で実践したことはありませんでした。

そこで今回は、真剣に隣地挨拶状作成業務のAI化を実践してみました。

今回はChatGPTを使って、隣地挨拶状作成業務をどこまでAI化できるかを考えていきます。

ところが、なぜか民法209条(隣地の使用)筆界・所有権界の違いADRや訴訟を前提とした郵送方法まで出てきたうえ、最終的には意外な結論になりました。結論だけ先に知りたい方はこちらをご覧ください。

まずは、AIに隣地挨拶状の役割や手順を本気で調べさせてみました。

Table of Contents

隣地挨拶状作成は、いかにもAI化しやすそうに見えた

隣地挨拶状は私にとって、「AI化しやすそうに見える業務」です。

理由は分かりやすく、ひな型があり、差し替える項目があり、案件ごとに少し文面を調整する場面もあるからです。

一方で、調査士の皆さんがご存じのとおり、隣地挨拶状は最初に隣地所有者へ接触する超重要な文書なので、文面の温度感、送付のタイミングなど、事務所の方針が出る上に、特にミスが許されない業務です。

ひな型があり、差し替える項目も決まっている

多くの土地家屋調査士事務所では、隣地挨拶状のひな型があると思います。

日付、隣地所有者の氏名、依頼者名、対象土地の所在・地番、測量予定時期、問い合わせ先などを差し替えて作成する形です。

事務所によっては、Wordのひな型とExcelの差し込み印刷で、ある程度スムーズに作成できるようにしていることと思います。私の勤務していた事務所でも、差し込み印刷だけで印刷できるようになっていました。

このように考えると、AI化に向いている業務に見えます。

  • 差し替える項目(住所氏名、所在地番)がある
  • 文章のひな型がある
  • 案件ごとに少し調整する
  • 補助者が作成し、資格者や担当者が確認する

定型文なのに、相手や案件によってとても気を遣う

ただ、隣地挨拶状は完全な機械作業でもありません。

隣地所有者が個人か法人か。遠方所有者か。共有者がいるか。依頼者と隣地の関係が良好か。過去に境界や越境物で揉めていないか。
こういった事情によって、文面の書きぶりや、送付後の対応が変わることがあります。

通常のひな型で足りることも多いですが、少し気を遣う案件では、過去の似た文例を探したり、表現をやわらかくしたり、逆に余計なことを書かないようにしたりすることもあります。

この「型はあるけれど、毎回とても気を遣う」という部分に、AIの出番がありそうに感じました。

手紙が先か、訪問が先かだけでも判断が分かれる

隣地挨拶状まわりで難しいのは、正解が一つではないことです。

先に手紙を送れば、「いきなりこんな手紙を送ってきて」と叱られることがあります。
逆に、先に訪問すれば、「急に来られても困る。先に手紙を送るのがスジでしょ」と叱られることもあります。

どちらが絶対に正しいというより、地域性、相手の感覚、依頼者との関係、事務所の方針などによって変わります。
そのため、このあたりの手順は、手紙を先に送るのか、先に訪問するのかも含めて、事務所ごとの運用方針によるところが大きいと思います。

だからこそ、隣地挨拶状の作成は、型があるわりにかなり気を遣う、大変な業務だと思います。

だからこそ、AIで少し楽にできそうに見えた

ひな型がある。
でも、相手や案件によって微調整がある。
しかも、実務的には少し気を遣う。

この条件だけ見ると、AIで効率化できそうです。

  • 案件の条件を入れれば、AIが過去のどのひな型を使うべきか提案してくれる
  • 既存の文面を貼れば、AIが強すぎる表現や説明不足を指摘してくれる
  • AIが無反応の隣地所有者に対する再通知文や、電話メモを作ってくれる

そういう使い方ができるのではないかと思いました。

業務のAI化を行う手順

私なりですが、土地家屋調査士業務のAI化を行う手順は次のようにしています。

  1. 情報検索:対象業務を正しく調べて、目的・作業範囲・注意点等を考えさせる
  2. 情報の検証:AIが調べた情報なので、正しいか人間の目で検証する
  3. 実務補正・業務分解:実務手順とのギャップを補正した上で、AI化できるよう細分化する
  4. 実装候補の評価:どの手順がAI化できるか、自動化・他のツールで代替できるかを評価する
  5. AI化範囲の絞り込み:AI化する手順、代替する手順、現状のまま残す手順に切り分ける
  6. 実装・検証:実際に行ってみて、問題点を検証する

では、次の章からは実際にAIを活用して「隣地挨拶状作成業務のAI化」をやってみた流れ、結果をお伝えします。

【検討1:情報検索】ChatGPTに考えさせたら、隣地挨拶状作成の話が境界立会いの事務作業全体に広がった

最初は、ChatGPTへ「土地家屋調査士が境界立会い業務で使う隣地挨拶状について、できるだけ詳しく調べてください」と依頼しました。

こちらとしては、隣地挨拶状の役割、目的、手順、注意点、工夫などを調べてもらい、「隣地挨拶状」を知った上で、AI化できる部分をChatGPTに考えてもらう予定でした。

ところが、返ってきた内容は、想像以上に大量(12,000字、検索268件、引用21件)のスーパーレポートでした。

何と12,000文字以上のレポート・・・

民法209条、筆界・所有権界、ADRまで出てきた

ChatGPTは、民法209条、筆界と所有権界の違い、証拠保全、ADR、筆界特定、訴訟、郵送方法、93条報告書といった論点まで拾ってきました。

情報収集は、かなり真面目に実行していました。

一次ソース(信頼できる公的情報:政府広報、日本土地家屋調査士会連合会サイト等)を見に行き、法令、通達、土地家屋調査士会関係の情報を集めてきました。

ただ、私が最初に考えていたのは「隣地挨拶状作成業務のAI化」です。

その入り口から、境界立会い全体、法的整理、証拠化、紛争対応へと広がっていったので、かなり大きな話になってしまいました。

境界立会い業務全体のフローチャートを作ってきた

さらに、ChatGPTは境界立会い業務全体のフローチャートも作ってくれました。

これはこれで面白い結果が出て驚きました。
境界立会い業務全体を俯瞰する資料としては、役立つかもしれません。

ただ、今回やりたかったのは、業務全体の整理ではなく、隣地挨拶状作成業務のAI化です。
ChatGPTは、こちらの目的を超えて、かなり大きく広げてきたと感じました。

一次情報を拾う力はあるが、目的から外れて広がることもある

この段階で分かったのは、AIには調査対象を広く拾う力があるということです。

特にDeep Researchのような機能を使うと、関連しそうな法令や制度、実務上の注意点をかなり広く集めてきます。

一方で、こちらが見たい粒度から外れることもあります。
「隣地挨拶状の作成手順をAI化したい」という目的に対して、「境界立会い業務全体の法的・実務的整理」まで返ってくる。

正しい情報が多くても、目的から見ると広がりすぎることがある。
ここは、AIを業務で使うときにかなり重要なポイントだと思いました。

次で情報の検証を行いましたが、ここまでで分かるように、送付状にそのまま入れるには重すぎる情報が大量に含まれていました。

【検討2:情報の検証】情報は正しい。でも、普通の挨拶状に「筆界」や「民法209条」は書かない・・・

情報収集の次は、「情報の検証」を行い、ChatGPTが収集した情報の整理を行います。

今回集められた情報を見ると、民法209条(隣地使用権)筆界証拠保全無反応対応郵送方法の使い分けなど、境界確定業務全体で見れば、必要になり得る一次情報ばかりでした。

ただし、通常の隣地挨拶状にそのまま落とせるかというと、別問題です。

正しい情報でも、初回の挨拶状に入れるには大げさすぎることがあります。

法律論を初回文書に出すと、相手の警戒心が上がる

たとえば、ChatGPTは民法209条の話を出してきました。

(ChatGPTの回答)※Deep Research機能を使用
民法209条は、境界標の調査又は境界に関する測量のため、必要な範囲で隣地を使用できると定めています。しかし同条は、住家については居住者の承諾がなければ立ち入れず、使用の日時・場所・方法は隣地所有者等にとって損害が最も少ないものを選ぶべきこと、原則として目的・日時・場所・方法をあらかじめ通知すべきこと、損害が生じたときは償金請求ができることも併せて定めています。

挨拶状の法的コアは、まさにこの事前通知機能にあります。逆に言えば、無断立入り、広すぎる立入り、時間帯配慮の欠如、住家部分への進入は大きなリスクです。

え?

そうだったんですね、挨拶状にも法的根拠・機能があったとは。

ただ、こんなことを言われても、「そうですか」と思うだけで、隣地挨拶状に入れるようなことではないですし、「法律上適正な手順を踏んでいます」と書かれても、相手(隣地所有者)にとっては「国家資格者が法律を使って何か言ってくる」と警戒心が上がるだけです。

これから筆界確認書に押印をもらおうというのに、警戒心を上げてどうする!って話です。

筆界・所有権界の説明は、隣地挨拶状には向かない

筆界と所有権界の違いについても、同じような情報が出てきました。

(ChatGPTの回答)※Deep Research機能を使用

実務上の最重要論点は、「境界」という言葉の意味を曖昧にしないことです。
公法上の「筆界」は所有者同士の合意で変更できませんが、私法上の「所有権界」は合意や時効などで動き得ます。

そうですね、「筆界」「所有権界」の違いは土地家屋調査士としては重要な論点です。
この整理自体は正しいです。

ただ、初回の隣地挨拶状でこの話を丁寧に書いたら、読まれるでしょうか?
おそらく、普通の隣地所有者には重すぎます。

むしろ、「何か難しい話が始まった」と感じられ、文書を読む前に距離を置かれる可能性もあります。

隣地挨拶状でまず伝えるべきことは、もっとシンプルです。

  • 誰から依頼を受けたのか
  • いつ頃、どこの土地について測量するのか
  • 隣地所有者に何をお願いしたいのか
  • 問い合わせ先はどこか

専門的な境界論は、必要な場面で、必要な相手に、必要な範囲で説明すればよいと思います。

「高齢者向け=ひらがな多め」は実務感がない

AIのズレとして分かりやすかったのが、高齢者向け文例です。

「高齢者向け」として、ひらがなを多くした文例が出てきました。

読みやすくしようとした意図は分かりますが、ただ、ひらがなを増やせばよいわけではありません。
相手が高齢者だからといって、幼い表現にすればよいわけではありません。
むしろ失礼に見えてしまう可能性もあります。

実務で必要なのは、相手を子ども扱いすることではなく、専門用語を減らし、文章を短くし、問い合わせ先や代理人対応を分かりやすくすることだと思います。

そもそも、登記記録だけで高齢者かどうかは分かりません。
また、高齢の方で手紙だけでは伝わりにくいと感じる場合は、文面を幼くするより、直接伺う、電話で補足する、ご家族や代理人への連絡方法を整理する、といった対応の方が実務的なこともあります。

こういった事情は、AIだけでは判断しにくい部分です。

一次ソースとして正しくても、通常実務にそのまま落とせるとは限らない

ここで感じたのは、AIの回答には「正しさ」と「実務での使いやすさ」の間に距離があるということです。

法令や通達、公的情報を拾ってくることはできます。
でも、それを隣地挨拶状という初回文書にどう落とすかは別問題です。

特に士業業務では、正しいことを全部書けばよいわけではありません。

相手にどう受け取られるか。
どこまで書くと重いか。
どこまで省くと説明不足か。
事務所としてどの温度感で案内するか。

この調整は、まだ人間の実務判断が必要だと感じました。

【検討3:実務補正・業務分解】実務手順を渡しても、ChatGPTはさらに大きな仕組みに広げてきた

さて、次はその「人間の実務判断」を行う段階です。
私はこの時点でも、隣地挨拶状作成のAI化がどうなるかを楽しみに進めていました。

そこで、実際の作成手順をChatGPTに渡しました。

私が勤務していた事務所(愛知県内)などで見ていた流れは次の通りでした。

  1. 依頼地の公図を取得する
  2. 隣接地や対側地の登記記録を取得し、所有者の住所氏名を確認する
  3. Wordひな型とExcel差し込み印刷で隣地挨拶状を作成する
  4. 郵送する

という流れを説明しました。すると、ChatGPTはさらに大きな仕組みに広げてきました。

AIは、作業を細かく分解し、AI化できる箇所をかなり広く示してきました。

通常の作成手順を渡すと、業務全体の分解が始まった

ChatGPTは、現行フローをかなり細かく分解しました。

依頼地把握、関係地抽出、登記記録確認、送付対象整理、文書作成、印刷・郵送、無反応対応、電話対応、現地挨拶、記録化。

ここまで分解されると、たしかに業務の全体像は見えやすくなります。

特に、AI化を検討するときには、いきなり「AIで文書を作らせる」という指示を出すのではなく、業務を分解することが重要です。

  • 定型作業はどれか
  • 変数(毎回変わる場所。今回なら依頼者の住所氏名、土地の所在地番等)はどこか
  • 判断すべき箇所はどこか
  • どこでミスが起きやすいか
  • どこは既存ツールで足りるのか

ですので、この分解自体は、AI化にかなり有効で必要な作業です。

公図・登記記録・所有者台帳までAI化対象に広がった

ChatGPTは公図の読み取り、登記記録からの所有者情報抽出、関係地一覧、所有者台帳の作成と、かなり広く提案してきました。

これはこれで、実現できたら便利です。ただし、初期実装としてはかなり重いです。

  • 公図の地番誤読(ChatGPTは図面読み取りが苦手)
  • 直接隣接か、道路・水路を挟むのかの判定
  • 共有者の扱い
  • 登記記録上の住所と実際の送付先の違い
  • 法人名や外字、住所変更、相続未了

このあたりをAIに任せるには、確認画面や人間確認の仕組みが必要になります。

つまり、発想としては面白いけれど、いきなりそこまで作ると、隣地挨拶状作成のAI化というより、かなり本格的な業務システム開発になってしまいます。

発送管理・未返信管理・電話メモのAI化を提案された

ChatGPTはさらに、文書作成だけでなく、発送後の管理にもAI化の範囲を広げてきました。

発送日、送付方法、追跡番号、返信状況、電話内容、訪問履歴、次対応、未返信者の抽出などです。
確かに、これらの作業も実務上はかなり重要です。

隣地挨拶状で後から困るのは、文面そのものよりも、誰に送ったか、いつ送ったか、反応があったか、次に誰へ連絡すべきかが分からなくなることだからです。

ただ、今やっているのは隣地挨拶状作成のAI化だというのに、AI化の候補業務が発送管理、未返信管理、電話メモまで広がっていました。

挨拶状作成AIではなく、境界立会い初動管理に近づいた

ここまで来ると、もはや「隣地挨拶状作成AI」ではありません
どちらかというと、「境界立会い初動管理AI」に近いものです。

これはこれで、実現できれば価値があります。

ただし、今回の記事で考えたかったのは、まず隣地挨拶状作成業務をAI化できるかです。

AIに考えさせると、発想が広がります。
一方で、放っておくとシステム全体の話になり、最初の目的からズレていきます。

この時点で、かなり注意が必要だと感じました。

【検討4:実装候補の評価】「今より面倒では?」という違和感が、AI化を見直すサインだった

ChatGPTの提案は情報量が多く、内容も立派でした。
ただ、読み進めていくうちに、少しずつ違和感が出てきました。

これは、本当に便利になるのだろうか
それとも、今より手順が増えるだけなのではないか。

AI活用を考えるとき、この違和感はかなり重要だと思います。

超長文の末に出てきた結論が「送付前チェック係」だった

さらにAI化の範囲を絞り込んでいくと、ChatGPTは「隣地挨拶状を作るAI」ではなく、「送付前の赤入れ・漏れ確認係」として使うのが適切だと結論づけました。

回答はかなり丁寧でした。

役割定義、チェック項目、チェックしてはいけない項目、実際に使うプロンプト、出力フォーマット、補助者が使う場合の注意点、防げるミス・防げないミスまで、かなり細かく整理されています。

ただ、読み終わって最初に感じたのは、「結局、作成AIではなくチェック係なのか」という拍子抜けでした。

もちろん、送付前チェックには意味があります。
差し込み漏れ、古い日付、前案件の情報残り、強すぎる表現、問い合わせ先漏れなどを見つける補助には使えます。ただ、毎回これをやるとなると、Wordで作った文面をChatGPTに貼り、長い指摘を読み、人間が再確認することになります。

これでは、効率化というより、確認工程を一つ増やしているだけではないかと感じました。

すでにWordひな型とExcel差し込み印刷がある

そもそも、多くの通常案件の隣地挨拶状作成には、Wordのひな型とExcel差し込み印刷でかなり対応できます。

隣地所有者名、依頼者名、所在地番、測量予定時期、問い合わせ先などを差し込むだけであれば、ChatGPTより差し込み印刷の方が安定しています。

ChatGPTに毎回文面を生成させるより、確認済みのひな型を使い続ける方が安全です。
特に、通常案件では、文章の創作性よりも、正確性と安定性の方が重要です。

AIの長い回答を読むこと自体が、現場ではコストになる

AIは、たくさんの情報を出してくれます。

ただ、その情報を読むのも人間です。
AIから細かい提案が大量に返ってきたとき、実務者はそれを確認し、取捨選択し、事務所の運用に合わせる必要があります。

この確認作業が重くなると、現場では使われません。

「便利そうだけど、読むのが大変」
「結局、どれを採用すればいいか分からない」
「今までのやり方の方が早い」

こう思われたら、AI化は定着しません。

AI導入で大事なのは、AIができるかどうかだけではなく、現場が使い続けられるかどうかです。

現場が「あ、面倒」と感じるAI化は定着しにくい

今回、私自身も途中で「あ、面倒だな」と感じました。

これはかなり大事なサインです。
AI化を進める側ですら面倒だと感じるなら、現場の補助者や担当者はもっと面倒に感じるかもしれません。

AIを入れることで、入力作業が増える。
AIの回答確認が増える。
既存のWordやExcel運用との二重管理になる。
結局、人間確認が増える。

こうなると、それは業務改善ではなく、業務追加です。
AI化を考えるときは、「AIでできるか」ではなく、「AIで今より楽になるか」で判断する必要があります。

【検討5:AI化範囲の絞り込み】本文作成のAI化はほとんど残らなかった

「今回は失敗か」という結論が見えてきたので、もうここで止めようかと思いましたが、一応最後まで検証することにして、あらためてAI化できる部分を絞り込みました。

最初は、隣地挨拶状の本文作成をAI化できると思っていました。

しかし、実際に検討すると、通常案件の隣地挨拶状の作成は既存ひな型で十分だと思います。(個人の感想です)

AIを使うなら、毎回の通常処理ではなく、例外対応やひな型改定時に絞った方がよさそうです。

通常案件の本文生成は、既存ひな型で足りる

通常の隣地挨拶状であれば、毎回ChatGPTに本文を作らせる必要は低いです。
むしろ、AIで毎回本文を作ると、表現が微妙に変わる可能性があります。

事務所の文体と合わない。
丁寧すぎる。
説明が長すぎる。
強く依頼しすぎる。
余計な情報を入れる。

こうしたリスクがあります。
既に確認済みのひな型があるなら、それを維持した方が安定します。

毎回のAIチェックも、通常案件では過剰になりやすい

一度は、既存文面チェックAIなら有効かもしれないと思いました。

しかし、これも毎回使うとなると過剰です。

通常案件では、差し替える項目は限られており、文面もほぼ固定されています。
それを毎回ChatGPTに貼って、長いチェック結果を読むのは、手間が増える可能性があります。

もちろん、ひな型を初めて作るときや、改定するときには有効です。
補助者教育用に、どこを見るべきか整理する用途にも使えます。

ただ、通常案件で毎回AIを使うものではないと感じました。

使うなら、ひな型改定時や例外案件の文面確認に限られる

AIが使えそうなのは、次のような場面です。

場面AIの使い方
ひな型を改定するとき強すぎる表現、説明不足、不要情報をチェックする
無反応後の再通知督促調になりすぎない文案を考える
法人宛て担当部署・管理担当者向けの表現に整える
遠方所有者電話説明、代理人対応、資料送付の案内を整理する
共有者多数誰に何をお願いしているか、説明を整理する
補助者教育隣地挨拶状で確認すべき観点を一覧化する

このように、AIは通常処理の置き換えより、例外案件や教育用途の方が合いそうです。

AI化は「作れるか」ではなく「手間が減るか」で判断する

今回の検討で重要だったのは、AIで作れるかどうかではありません。

AIに文面を作らせることはできます。
チェックリストを作らせることもできます。
発送管理表を作らせることもできます。

でも、それが実務上の改善になるかは別です。

判断基準は、次のように考えるべきだと思います。

判断軸確認すべきこと
作業削減今より手数が減るか
ミス防止宛名・地番・日付・同封物漏れを減らせるか
現場定着担当者や補助者が面倒がらずに使えるか
責任分界AIに判断させてはいけない部分を分けられているか
既存運用との相性Wordひな型・Excel差し込み印刷を壊さずに済むか

「AIでできる」だけでは足りません。「既存業務より楽になる」ことが必要です。

【検討6:実装・検証】最後に残ったのは、AIツールではなく発送記録台帳だった

最後に、一応の検証として実装まで進めました。
最終的に残ったのは、AIで隣地挨拶状を作る仕組みではありませんでした。

通常業務では、既存のWordひな型とExcel差し込み印刷を維持する。
作成済みのWordデータを案件フォルダに保存する。

最終的に残った実装案は、「必要に応じて、発送日や反応状況を簡単な台帳に残す」ことでした。

後から困るのは、文面よりも送付後の記録だった

実務で後から困るのは、文面そのものではなく、記録です。

誰に送ったか。
いつ送ったか。
どの住所へ送ったか。
返戻があったか。
電話があったか。
次に訪問すべきか。
再通知が必要か。

これが一覧で見えないと、後から対応が漏れます。

逆に言えば、ここが見えるだけでも、通常業務ではかなり助かります。

誰に、いつ、どこへ送ったかが一覧で見えることが重要だった

そこで、最終的にはChatGPTがシンプルな発送記録台帳を作りました。

AI機能は入っていません。記録する項目は、次のようなものです。

項目内容
案件名どの案件の隣地挨拶状か
隣地地番どの隣接地か
隣地所有者誰に送ったか
送付先住所どこへ送ったか
挨拶状ファイル名作成したWordデータの保存先
作成日いつ作ったか
発送日いつ送ったか
送付方法普通郵便、特定記録、持参など
反応状況未返信、電話あり、返信あり、返戻など
次対応電話、再送、持参、確認不要など
備考共有者、法人、遠方、注意事項など

これで十分な場面は多いと思います。

せっかくなので、見てみようと思われた方はこちらからダウンロードしてみてください。
使い勝手や改善点があれば、教えていただけると助かります。

Wordデータの保存だけで足りる案件もある

もちろん、すべての案件で台帳が必要とは限りません。

隣地が少なく、通常案件で、担当者が一人で把握できている場合は、作成済みのWordデータを案件フォルダに保存しておくだけでも足りることがあります。

むしろ、管理のために台帳を増やしすぎると、それもまた手間になります。
ここでも大事なのは、必要以上に仕組みを重くしないことです。

AI化でも、台帳化でも、管理のための管理になってしまうと続きません。

通常業務には、AI機能なしのExcel台帳で十分な場面が多かった

今回作った台帳は、普通のExcelです。

発送記録、選択肢、使い方のシートを用意し、送付方法や反応状況を選択式で記録できるようにする程度です。
発送後7日以上経過して未返信のものが分かるようにするだけでも、実務上は役立ちます。

AI化を考えた結果、最後に残ったのがAIツールではなくExcel台帳だった。

これは少し意外でしたが、「AI化しても効率化にならない可能性が高い」と知れたのは、かなり実務的な結論だと思います。

まとめ|AI化とは、AIを使うことではなく、業務を見直すことだった

今回、隣地挨拶状作成業務をAI化できないか、本気で考えてみました。

最初は、AIで文面作成や作成手順を効率化できると思っていました。
しかし、検討を進めると、通常の隣地挨拶状作成は、既存のWordひな型とExcel差し込み印刷でかなり足りることが分かりました。

※もちろん、これは私(AIの杜さいた 岡田) 個人の感想です

AIを使うとしても、毎回の本文作成ではなく、ひな型改定時、例外案件、無反応後の再通知、補助者教育などに絞った方が現実的です。

AI化できそうな業務でも、既存の道具で足りることがある

AI化できそうに見える業務でも、すでに既存の道具でうまく回っていることがあります。

今回でいえば、Wordひな型とExcel差し込み印刷です。
この運用がすでに安定しているなら、無理にAIを挟む必要はありません。

AI化は、既存のやり方を壊すことではありません。
既存のやり方で足りている部分は、そのまま使えばよいと思います。

AIを入れて手間が増えるなら、それは業務改善ではない

AIを入れると、できることは増えます。

ただし、入力作業、確認作業、修正判断、個人情報管理、補助者への説明も増えることがあります。
結果として、現場が「あ、面倒」と感じるなら、そのAI化は定着しにくいです。

業務改善として見るなら、AIを入れた結果、手間が減るか、ミスが減るか、判断が楽になるかを見なければいけません。

AIは毎回の定型処理より、例外対応で効くことがある

今回の隣地挨拶状作成では、通常案件の本文生成にはあまりAI化の価値が残りませんでした。

一方で、例外対応では使える余地があります。

無反応が続く場合。
返戻があった場合。
法人所有者へ送る場合。
遠方所有者や共有者がいる場合。
ひな型を改定する場合。
補助者へチェック観点を教える場合。

こうした場面では、AIを壁打ち相手や整理係として使えます。

「どこにAIを使わないか」まで考えることも実務のAI化である

AI化とは、何でもAIに置き換えることではありません。

どこにAIを使うか。
どこは既存のWordやExcelで足りるか。
どこは人間が判断すべきか。
どこは記録だけ残せばよいか。

ここまで分けて考えることが、実務に合ったAI化だと思います。

今回の結論は、少し地味です。

隣地挨拶状作成業務は、通常案件では無理にAI化しなくてよい。
Wordひな型とExcel差し込み印刷を維持する。
必要なら、作成・発送・反応状況を簡単に記録する。
AIは、例外案件やひな型改定時に使う。

ただ、この地味な結論こそ、実務のAI化では大事なのだと思います。

AIを使うことではなく、業務を見直すこと。
そして、使わない判断も含めて設計すること。

今回の隣地挨拶状作成業務の検討では、そこが一番大きな学びでした。

土地家屋調査士・登記事務所のAI無料相談

「ウチの事務所でもAI導入しようか迷ってるけど、必要かどうか分からない」 そう思われた方は、まずはお気軽にご相談ください。(相談無料、オンライン対応) AI導入の要否、活用方針まで、貴事務所の状況に合わせて具体的にアドバイスいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA