境界確定や確定測量の業務では、越境物が見つかった場合に、依頼者と隣地所有者との間で越境物覚書を取り交わすことがあります。
ただ、越境物覚書は、氏名・住所・地番・越境物の種類・越境の状況・将来の取り扱いなど、案件ごとに差し替える情報が多く、毎回ゼロから作ると手間がかかります。
この記事では、まず越境物覚書の基本ひな形を掲載します。
そのうえで、ChatGPTなどのAIを使って、名前や地番の差し替え、文章のたたき台作成、転記ミスの確認を効率化する方法を紹介します。
なお、越境物覚書は、当事者間の権利関係や将来の承継にも関わる文書です。
AIで作成した文書をそのまま使うのではなく、必ず案件資料・測量図・当事者の意思・資格者の確認を踏まえて修正してください。
AIで実際に作成する場合は、関連ページの越境物覚書作成プロンプトメーカーも参考にしてください。
越境物覚書とは
越境物覚書とは、隣接する土地の間で、ブロック塀、軒、雨樋、フェンス、樹木などが境界を越えている場合に、その状況や将来の取り扱いについて当事者間で確認する文書です。
たとえば、現時点では撤去しないものの、将来建替えや工事を行うときに撤去する、承継人にも内容を引き継ぐ、費用負担をどうする、といった事項を整理するために使われます。
土地家屋調査士業務では、確定測量や隣地立会の過程で越境物が判明し、その説明や書面化が必要になることがあります。
ただし、越境物覚書は単なる事務書類ではありません。土地所有者、隣地所有者、買主、金融機関、不動産仲介会社などにも影響する場合があるため、記載内容は慎重に確認する必要があります。
越境物覚書の基本ひな形
以下は、越境物覚書の基本ひな形です。実際に使用する場合は、案件の内容に合わせて修正してください。
越境物覚書
令和〇〇年〇〇月〇〇日
【甲】
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:〇〇 〇〇 印
【乙】
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:〇〇 〇〇 印
甲及び乙は、下記土地の境界付近に存在する越境物について、以下のとおり確認し、合意する。
記
第1条(対象土地)
甲所有土地:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇
乙所有土地:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇
第2条(越境物の表示)
甲及び乙は、甲所有土地上の〇〇が、乙所有土地側へ約〇〇メートル越境していることを確認する。
越境の位置及び範囲は、別紙図面表示のとおりとする。
第3条(現状の確認及び存置)
乙は、前条の越境物について、現状のまま存置することを認める。
第4条(将来の取り扱い)
将来、甲所有土地又は乙所有土地において建物の建替え、工作物の撤去、外構工事その他越境物の是正が必要となる工事を行う場合、甲及び乙は協議のうえ、越境状態の解消に努めるものとする。
第5条(費用負担)
越境物の撤去、移設又は是正に要する費用負担については、当該工事の原因、越境物の所有者、当事者間の協議内容を踏まえて、甲乙協議のうえ決定する。
第6条(承継人への効力)
甲及び乙は、本覚書の内容を、それぞれの相続人、譲受人その他包括承継人及び特定承継人に承継させるよう努めるものとする。
第7条(協議事項)
本覚書に定めのない事項又は本覚書の解釈に疑義が生じた場合は、甲乙誠実に協議して解決するものとする。
以上の合意を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
甲: 印
乙: 印
上記はあくまで基本形です。実務では、越境物の種類、越境の原因、撤去時期、費用負担、承継人への説明、別紙図面の有無などによって、文言を調整する必要があります。
越境物覚書で確認すべき項目
越境物覚書を作成する際は、最低限、次の項目を確認します。
- 当事者の氏名・住所
- 対象土地の所在・地番
- 越境物の種類
- 越境の位置・範囲・長さ・面積
- 越境物の所有者
- 現状存置を認めるかどうか
- 将来撤去する時期・条件
- 撤去・移設・是正の費用負担
- 承継人へ内容を引き継ぐかどうか
- 別紙図面を添付するかどうか
特に重要なのは、越境物の特定と将来の取り扱いです。
「ブロック塀が越境している」とだけ書くのではなく、どの土地からどの土地へ、どの部分が、どの程度越境しているのかを明確にします。
また、「将来撤去する」と書く場合も、どのようなタイミングで、誰が、どの費用負担で対応するのかを検討する必要があります。
AIで効率化できる部分
越境物覚書の作成でAIが役立つのは、主に下書き作成と情報整理です。
たとえば、次のような作業はAIと相性があります。
- 当事者情報をひな形に差し込む
- 越境物の種類ごとに文案例を作る
- 工事時撤去、現状存置、協議事項などの表現を比較する
- 覚書の条項構成を整理する
- 入力漏れがないかチェックリスト化する
- 依頼者向けの説明文を作る
一方で、AIに任せるべきではない部分もあります。
- 越境の有無や範囲の最終判断
- 境界の判断
- 当事者の合意内容の確定
- 費用負担の法的判断
- 覚書の法的有効性の最終判断
AIは、文書作成のたたき台や作業補助には使えます。しかし、境界・権利・合意内容の判断は、資料と当事者確認を踏まえて人間が行う必要があります。
AIを使った越境物覚書作成の流れ
AIを使う場合は、いきなり「越境物覚書を作って」と指示するのではなく、案件情報を整理してから使う方が安全です。
基本的な流れは次のとおりです。
- 対象土地、当事者、越境物の種類を整理する
- 越境の位置・範囲・長さ・面積を測量図や資料で確認する
- 将来の取り扱いについて、当事者の希望や合意内容を確認する
- AIに案件情報と作成条件を入力する
- AIが作成した覚書案を、人間が確認・修正する
- 必要に応じて関係者・専門家に確認する
この手順を踏むことで、AIの出力をそのまま信じるのではなく、人間が確認できる材料をもとに、下書き作成だけをAIに任せる形にできます。
越境物覚書作成プロンプトメーカーを使う
ただ、実際にChatGPTへ指示を出す場合、プロンプトの作り方で結果が大きく変わります。
単に「越境物覚書を作ってください」と入力するだけでは、案件に合わない条項や、確認不足の文言が出てくることがあります。
そこで、登記サムライドットコムでは、必要事項を入力するだけで覚書作成用の指示文を作れる越境物覚書作成プロンプトメーカーを用意しています。
プロンプトメーカーを使うと、次のような情報を整理しながら、ChatGPTへ貼り付ける指示文を作成できます。
- 甲乙の氏名・住所
- 対象土地の所在・地番
- 越境物の種類
- 越境の状況
- 現状存置の有無
- 将来撤去・是正の条件
- 承継人への引き継ぎ
- 文体や条項構成の指定
自分で長いプロンプトを考える必要がないため、まずAIで越境物覚書の下書きを試したい場合には、プロンプトメーカーから始めるのが現実的です。
無料特典
調査士業務向けプロンプト・カスタムGPTを無料で受け取れます
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調査士用プロンプト一覧も活用する
越境物覚書以外にも、土地家屋調査士業務ではAIと相性のよい文書作成があります。
たとえば、隣地挨拶状、送付状、会議録、督促文、隣地対応文案などです。
関連するプロンプトは、調査士用プロンプト一覧にまとめています。
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越境物覚書だけを単発で作るのではなく、関連する文書作成全体をAIで効率化すると、転記・表現調整・確認作業の負担を減らしやすくなります。
AIで作った覚書を確認するときの注意点
AIで作成した越境物覚書は、必ず人間が確認してください。
特に、次の点は重点的に確認する必要があります。
- 当事者の氏名・住所に誤りがないか
- 対象土地の地番が正しいか
- 越境物の種類・位置・範囲が資料と一致しているか
- 別紙図面と本文の内容が矛盾していないか
- 撤去時期・費用負担の表現が当事者の合意と一致しているか
- 承継人への引き継ぎに関する表現が適切か
- 余計な法的断定や不要な約束が入っていないか
AIは、自然な文章を作るのは得意です。しかし、自然な文章であっても、案件の事実関係や当事者の合意内容と違っていれば、そのまま使うことはできません。
越境物覚書は、後日のトラブルを防ぐための書類です。AIは下書き担当、人間は確認担当と役割を分けて使うのが安全です。
まとめ
越境物覚書は、越境物の状況や将来の取り扱いを当事者間で確認する重要な文書です。
毎回ゼロから作成するのではなく、基本ひな形を用意しておくことで、書類作成の負担を減らせます。
さらに、ChatGPTなどのAIを使えば、当事者情報の差し込み、条項案の作成、確認項目の整理などを効率化できます。
ただし、AIが作るのはあくまで下書きです。越境の事実、境界、当事者の合意、費用負担、承継人への引き継ぎなどは、必ず人間が確認してください。
越境物覚書の作成をAIで試したい方は、まず越境物覚書作成プロンプトメーカーや、調査士用プロンプト一覧から始めるとよいでしょう。
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