2026年10月2日、千葉県土地家屋調査士会 茂原支部の皆さまを対象に、生成AIの実務活用研修を担当させていただきました。
会場は一宮町中央公民館(千葉県長生郡一宮町)。参加者の皆さまには会場へお集まりいただき、私はZoomからオンラインで登壇する形式での開催です。
また、千葉県土地家屋調査士会・千葉県公共嘱託登記土地家屋調査士協会からもオンラインでご参加いただき、オンラインも含めて合計20名以上の方々にご参加いただきました。
今回のテーマは、
「文章生成だけじゃない!
土地家屋調査士のための生成AI実務活用研修」
です。ChatGPTやGeminiというと、文章作成や要約に使うイメージが強いかもしれません。
今回はそこから一歩進めて、地積測量図の座標読み取り、登記申請書・添付書類のチェック、依頼者向け説明イラストの生成など、土地家屋調査士業務の中で生成AIをどこまで活用できるのかを、実演を交えながらご紹介しました。
まずは、地積測量図をAIで読み取る
最初にご紹介したのは、地積測量図をAIへ読み込ませ、点名や座標値を抽出・一覧化する方法です。
画像やPDFをAIへ渡し、座標値を読み取り、Excel等へ貼り付けやすい形式に整理させます。
この作業は、生成AIが得意とする「資料から情報を抽出し、整理する」使い方の一つです。
ただし、AIが読み取った数字をそのまま使えるわけではありません。
- 数字の読み違い
- 点名の取り違え
- 座標の欠落
- 小数点やマイナス記号の誤読
- X座標・Y座標の取り違え
などが起こる可能性があります。
そのため研修では、原図との照合、点名・座標数の確認、CADでの検算など、最後は必ず人間が確認することもあわせてお伝えしました。
「速く読むこと」と「正しく読むこと」は別です。
登記申請書・添付書類をAIにチェックしてもらう
続いて、登記申請書や添付書類をAIへ読み込ませ、内容をチェックさせる方法をご紹介しました。
ここでのポイントは、AIを「最終判断をする人」ではなく、「チェックを補助する人」として使うことです。
たとえば、次のような確認をAIへ依頼できます。
- 記載漏れがないか
- 申請書と添付書類に不一致がないか
- 気になる箇所がないか
- 修正文案を作れる箇所がないか
人が資料を準備し、AIが照合・指摘し、その結果を人が確認して修正する。
AIに全部を任せるのではなく、人とAIで確認を重ねる使い方です。
参加者の皆さまにも、AIで説明イラストを作っていただきました
今回の研修では、講師の実演を見るだけではなく、参加者の皆さまにも実際にChatGPTやGeminiを使っていただきました。
テーマは、土地家屋調査士が依頼者へ説明するための「確定測量の流れ」です。
レジメに掲載した短いプロンプトをスマートフォンで撮影し、それぞれのAIへ読み込ませて、説明用イラストを生成していただきました。
研修中には画像共有フォームにも投稿いただきましたので、実際に共有いただいた画像をご紹介します。

まずは、レジメに掲載したプロンプト部分をスマートフォンで撮影し、AIへ読み込ませると、確定測量の流れを説明する画像が生成されるので、これを皆さんに体験していただきました。

こちらは確定測量の流れが6段階で生成されています。ですが・・・画像上部に本来は画像に入れる必要のないプロンプト文まで表示されてしまいました。
「ちがう、そうじゃない!」と言いたくなる画像ですね。

同じプロンプトでも、こちらは「ご依頼・事前調査」から「成果資料の作成・お渡し」まで、横長の6工程としてまとめられました。
しかしよくよく見ると、「③隣接地との確認」「④境界立会い」と、いわゆる民民立会いが2回行われています。
「隣接地所有者」と「関係者」を別と考えたのか、役所(道路管理者)と考えたのでしょうか、謎は深まるばかりです。

こちらも6段階で生成されていますが、投稿された方からは、「⑤の杭が変だったので直す指示をしました」とのコメントがありました。
今は一度作った画像でも、細かく修正ができるので、「一発で成功」を目指さず、少しずつ修正していくのが良いですね。
このように、同じプロンプトで画像を作っても、毎回、構成や表現は大きく変わります。
そして、見た目がきれいな画像ができたとしても、内容まで正しいとは限りません。
「きれいな画像=正しい説明」ではありません
生成された画像を見るときには、単にデザインを見るのではなく、土地家屋調査士として内容を確認する必要があります。
- 工程が抜けていないか
- 工程の順番がおかしくないか
- 立会いや関係者確認が単純化されすぎていないか
- 「測量をすれば境界が決まる」と誤解させる表現になっていないか
- 境界標や専門用語の表現がおかしくないか
AIは、与えられた情報をもとに、それらしい文章や画像を作ることは得意です。
しかし、土地家屋調査士業務の前提、案件ごとの事情、地域の運用、関係者との確認など、AIへ伝えていない情報まで正しく理解しているわけではありません。
そのため、AIが作ったものを「完成品」ではなく「説明資料のたたき台」として使い、最後は専門家が確認することが重要です。
仕事でAIを使うなら、個人情報をどこまで入力してよい?
研修の後半では、AIを仕事で使うときに避けて通れない個人情報の取扱いについてもお話ししました。
土地家屋調査士業務では、氏名、住所、地番、登記情報、相続関係、境界紛争、打合せ記録、現場写真など、多くの情報を扱います。
こうした情報をAIへ入力するときは、
- そもそもその情報を入力する必要があるのか
- 匿名化・削除できないか
- どのAIを使っているのか
- 個人向けプランなのか、組織向け環境なのか
- 事務所内で誰が確認するのか
をセットで考える必要があります。
特に研修では、「有料版だから個人情報を入力してよい」という単純な話ではないこともお伝えしました。
AIを仕事で使うからこそ、「何を入力してよいか」「どの環境を使うか」「誰が最終確認するか」という事務所内のルールづくりが重要になります。
AIは、自信満々に間違えることがあります
もう一つ重要なのが、AIの誤回答、いわゆるハルシネーションです。
AIは、分からないことを必ず「分かりません」と答えるわけではありません。
- 存在しない情報を作る
- 数字や固有名詞を微妙に間違える
- 存在しない法令や判例を作る
- 一部だけ正しいため、間違いを発見しにくい
- 自信ありげに誤答する
といったことがあります。
そのため研修では、AIへ質問する方法だけではなく、元資料を渡す、条件や禁止事項を伝える、根拠や出典を確認する、e-Gov等の一次資料まで確認するといった「確認する方法」についてもご紹介しました。
AIが答えたことは、正しいことの証明にはなりません。
実務でAIを使う場合は、使い方と同じくらい、確認方法を決めておくことが重要です。
アンケートでも「AIと人の役割分担」が伝わった結果に
研修後のアンケートでは、回答をいただいた方全員から、セミナー全体について「満足」と回答いただきました。
また、
「AIを業務で使う際の『使いどころ』と『人が確認すべきところ』のイメージは明確になりましたか?」
という質問についても、全員が「とても明確になった」または「ある程度明確になった」と回答されました。
今回の研修でお伝えしたかったのは、AIに仕事を全部任せることではありません。
データの抽出、一覧化、文章のたたき台、仮チェック、説明イラスト、文字起こしなど、AIに任せやすい工程はAIへ任せる。
一方で、現場の測量、例外への対応、関係者との調整、専門判断、最終確認、説明責任は人が担う。
その切り分けをしながら、少しずつ実務へ取り入れていくことが、現在の生成AIとの現実的な付き合い方だと考えています。
ご参加ありがとうございました
千葉県土地家屋調査士会 茂原支部の皆さま、このたびは研修の機会をいただき、ありがとうございました。
また、画像生成の演習や画像共有にもご協力いただき、ありがとうございました。
生成AIは、今後もできることが増えていくと思います。
一方で、土地家屋調査士業務で利用する以上、個人情報、誤回答、専門判断、最終確認といった問題を避けることはできません。
「AIに何ができるか」だけではなく、「どこまでAIに任せ、どこから人が確認するのか」まで含めて考えることが重要です。
土地家屋調査士会・支部向けAI研修について
AIの杜さいたでは、土地家屋調査士会・支部・勉強会向けに、土地家屋調査士業務に特化した生成AI研修を行っています。
地積測量図の読み取り、書類チェック、説明資料作成などの実務活用から、個人情報保護、AI利用ルール、ハルシネーション対策まで、参加者のAI利用状況に合わせて内容を組み立てます。
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