AIが話題になっているけれど、実務でどこから使い始めればいいのか分からない。
便利そうだけど、間違った書類を出してしまわないか不安……。
そんな悩みをお持ちの土地家屋調査士の先生は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。
これからAIを安全に導入するための鉄則は、「自分がもともとできる業務を、より早く・正確に処理する」使い方から始めることです。
AIの使い方には、大きく分けて「2つのルート」がある
AIには、大きく分けて2種類のアプローチがあります。まずは両者の違いをご覧ください。

| 使い方 | 業務の例 | おすすめ度 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 既存業務 すでにできることを より速くする | ・定型メールの作成 ・地積測量図の読取補助 ・案内状やブログの原案 | ◎ 安全 (初心者向け) | 自分の目で確実に最終チェックができ、 事故が起き辛く、着実な時短効果 |
| ②新規業務 今までできなかったこと に挑戦する | ・プログラミング ・複雑な業務フロー設計 ・知らない分野の書類作成 | △ 要注意 (リスクあり) | できることの幅は広がるが、 元の知識がないためハルシネーション (AIのもっともらしい嘘)を見抜けず、 事故につながる危険がある。 |
1. 「すでにできること」を圧倒的に速くする(初心者におすすめ)
まず最初に取り組むべきなのがこちらです。
すでにご自身が「正しいか・間違っているか」を即座に判断できる業務にAIを使います。
これらの業務は、AIが出してきた文章を見て「この表現はおかしい」「ここは実務に合わないから直そう」と、
自分自身の目で確実に最終チェックができます。
この状態なら、AIによる効率化の恩恵だけを受けつつ、事故を防ぐことができます。
2. 「今までできなかったこと」に挑戦する(要注意)
一方で、AIを使えば「自分には知識がなくて着手できなかったこと」も形にできるようになります。
これは非常に魅力的ですが、同時に大きな危険をはらんでいます。
なぜなら、自分に元の知識がないと、AIが間違った答えを出したときに気づけないからです。
なぜ、知らない分野でAIを使うと危険なのか?
実務において一番怖いのは「もっともらしいウソ」
AIは、前提条件がズレていても、指示が曖昧でも、とりあえず「それらしい形」にまとめて文章を出力します。
見た目は整っていて、日本語も自然です。
しかし実務では、「変な日本語だから気づけた」よりも、「自然で整っているから、そのまま信じて使ってしまった」というケースのほうが圧倒的に怖いのです。
調査士業務で起こり得る「AIの暴走」例
私は調査士事務所に15年勤務し、現在は士業専門のウェブライター・AIコンサルタントとして活動しています。
もし、「調査士業務の知識がない人」がAIを使って記事を作ると、次のような“もっともらしい誤り”が平気で出力されます。
⚠ AIが引き起こす「実務上のズレ」の例
例1:「現況測量」と「確定測量」の混同
AI:「不動産売買には境界を決める現況測量が必要です」
→ 一般読者は気づきませんが、実務家が見れば一発で違和感を抱きます。例2:建物滅失登記の申請権者のズレ
AI:「滅失登記は土地所有者から申請できます」
→ 建物所有者の所在不明などの前提条件をすっ飛ばして断定してしまい、読者に誤解を与えます。
※ご存じのとおり、建物所有者が所在不明といった限定的な条件にのみ、「滅失『申出』」が可能例3:農地の地目変更の単純化
AI:「農地は手続きをすれば宅地に地目変更できます」
→ 農業委員会への届出・許可のハードルを無視し、安易な期待を持たせてしまいます。
※許可(市街化区域以外)の場合は不許可、市街化区域でも生産緑地の場合は買取申出が必要など、
この表現では勘違いされるリスクが高い
いかがでしょうか。
専門知識があれば一瞬で「おかしい」と気づけますが、知識がない業務でAIを使うと、このような内容をそのまま顧客や世間に出してしまうリスクがあるのです。
AI導入を成功させるための「3つの基本方針」
① まずは「自分で正誤判定できる業務」に絞る
最初の一歩は、「AIに何ができるか」を探すことではありません。
「自分自身が、どこまで確実に確認できるか」を基準に業務を選んでください。
通常ご自身が処理している業務を思い出し、処理量が多い、時間と手間だけかかっている業務からAI化してみましょう。
② いきなり本番で使わず「壁打ち相手」にする
最初から顧客対応や正式な文書作成にAIを使う必要はありません。
まずは、自分の考えを整理する壁打ち相手や、メール・送付状など文章の言い換え、複数案の比較といった「学習用・練習用・下書き用」としてAIのクセを掴むことから始めましょう。
③ ドローンや3D測量機器と同じように扱う
土地家屋調査士の方ならイメージしやすいでしょう。
ドローンや3Dスキャナも、購入してその日にいきなり本番の現場で使うことはありませんよね。
まずは安全な場所でテストし、限界や注意点を知り、運用ルールを決めてから実務に投入するはずです。
AIもまったく同じです。
💡 実務で差が出るのは「性能」よりも「運用設計」
「ChatGPTとGemini、どちらが賢いか?」よりも、
「自事務所のどの業務に、どういうルールで使うか?」を決めることのほうが、圧倒的に重要です。
AIは答えを断定する機械ではなく、「考えるための優秀な補助道具」として使いこなしましょう。

結局、自分の事務所は何から始めるべきか?
AI導入で一番難しいのは、ツールの使い方を覚えることではなく、「自分の事務所の状況に合わせて、どこからAIを入れるのが最適かを見極めること」です。
判断に迷ったときは、以下の基準で業務を仕分けしてみてください。
| AI適性 | 業務の条件 | 具体的な業務例 |
|---|---|---|
| 〇 推奨 (ここから始める) | ・自分が100%正誤判定できる ・間違っても取り返しがつく ・繰り返し発生する面倒な作業 | 定型メール、立会案内状の下書き、ブログ構成案、社内FAQ、地積測量図の読取補助 など |
| ✖ 慎重 (最初は任せない) | ・自分が正誤判定できない ・法的・技術的な判断が必要 ・日常業務外の作業 | 法務局に照会すべき案件の判断、 事実確認が不十分な対外文書、 プログラミングやアプリ開発 |
まとめ:AI導入を成功させるための鉄則
AIの使い方には、大きく分けて「すでにできることを速くする」「できなかったことに挑戦する」の2つがあります。
後者は魅力的ですが、元の知識がないとAIの「もっともらしいウソ」を見抜けず、実務上の事故につながる危険があります。
そのため、これからAIを始める土地家屋調査士の先生は、まず「自分自身で確実に正誤判定できる業務(定型文作成や読取補助など)」からスタートするのが最も安全で確実です。
AIは万能の魔法ではありませんが、「使いどころ」と「運用ルール」さえ間違えなければ、残業時間を劇的に減らす強力な相棒になります。
大事なのは「AIに何ができるか」ではなく、「自分の事務所のどこに、どう使うか」です。
「自分の事務所では何から始めるべきか」「スタッフにどう使わせるか」など、少しでも運用や線引きに迷われた際は、ぜひ以下の無料相談をご活用ください。
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一般的なITコンサルタントとは違い、調査士実務(立会、確定測量、農転など)の専門用語をそのままお話しいただいて構いません。
- まずAIに任せやすい業務
- まだ任せないほうがよい業務
- スタッフに使わせる際の安全ルール
などを、オンラインで一緒に整理します。